日本に先立ち米国で発表された「タイプR専用」の技術
2025年秋の新型プレリュード発売を控え、「タイプR」待望論が一部で盛り上がっているようだが、どうやらそれを求める必要はなさそうだ。新型プレリュードには、シビックタイプRから転用されたサスペンション技術やシャシ/アーキテクチャーが採用されることが明らかになったからだ。フロントにおごられたブレンボ製ブレーキもまたしかりである。
かといって、新型プレリュードがシビックタイプRのような硬派なマシンになるわけではない。「スポーティでありながら快適なグランドツーリングのドライビング体験を提供するために、新しいプレリュード専用に調整されます」と発表されたとおり、ジェントルな乗り味ながらホンダらしいスポーティなハンドリングを実現していることに力が注がれている。
ホンダ自慢の2モーター式ハイブリッドシステム「e:HEV」と秘密兵器「S+シフト」など、時代の要請に応えた電動化時代の新世代スポーティモデルとなるだろう。
ニュルブルクリンク最速FFモデルを支えた2軸式ストラット
タイプRのサスペンションシステムのキーテクノロジーが、「デュアルアクシス・ストラットサスペンション」と呼ばれる2軸式ストラット構造である。2015年に登場してニュルブルクリンクFF最速記録を打ち立てたFK2型、その記録を更新したFK8型(2017年)、そして現行のFL5型(2022年)の3世代にわたるシビック タイプRに採用されている「タイプR専用のサスペンション技術」が、新型プレリュードにも採用される。

2025年1月10日から発売されているFL5型「シビックタイプR レーシングブラックパッケージ」。
そのメリットは、FFハイパワー車で発生しがちな「トルクステア」を抑え込み、旋回時・加速時のリニアなハンドリングを実現するとともにタイヤの接地性を高めるところにある。通常は一体化されるナックルとダンパー部にダンパーフォークを追加して分離することで、トルクステア発生の原因となるセンターオフセット量を大幅に短縮することで実現したホンダの独自開発技術である。
ニュルブルクリンクFF最速の記録達成に大いに貢献したのがこの構造であるが、現在に至る3世代のシビック タイプRにしか採用されていない。それが新型プレリュードに採用されるというのは、(もちろんチューニングは異なるが)ワクワクさせられる話である。

FK2型シビックタイプRから採用が始まった「デュアルアクシス・ストラットサスペンション」。

こちらは一般的なFF車に採用されるストラット式フロントサスペンション。センターオフセット量の違いに注目されたし。
ほかにもシビック タイプR直系の技術を大胆に採用か
今回の発表では、ほかにもブレンボ製の対向4ポットブレーキ、ベース車(シビック?)よりも拡大された前後トレッド幅など、シャシ全般のセットアップは基本的にシビック タイプRから多くを転用していることが明言されている。あくまで良質な乗り心地と優れたハンドリングを両立するための選択だと思われるが、久々のハイブリッドスポーツについては、まもなく日本でも詳細が明らかにされるはず。

お馴染みのブレンド製ブレーキだが、カラーリングもエンブレムも異なる仕様。
ホンダの電動化戦略はここしばらくのあいだEV/SDV化を中心に進められてきたが、2024年前後から次世代ハイブリッド車に触れられることが増えてきた。プラットフォームやエンジン、さらに駆動方式まで一新された次世代モデルの登場は2026年後半と予想される。その端境期に登場する新型プレリュードは、新旧技術が交錯するモデルと言えなくもない。良い意味で、ホンダらしさをもっとも色濃く残す次世代車のトップバッターとも言える。
その先には、中型と小型、電動4WD技術やE2EをはじめとするSDV技術を採用した少なくとも2車種のスポーティモデル(下図参照)の存在も暗示されている。ホンダらしいスポーツ&スポーティモデルは、プレリュードを皮切りに続々と発表されるだろう。

EVだけでなくハイブリッドも進化。スポーティモデルも小型・中型でラインナップされる?
7月に開催された英国グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでデモランも披露した。ホンダUK公式YouTubeでその走りを確認できる。
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