2025年5月13日(現地時間)、米ゼネラルモータース(GM)は韓国LGエナジーソリューション(LG)と共同開発した次世代電池「LMRバッテリー」を公開するとともに、2028年にGMのEVピックアップトラックやフルサイズSUVに搭載を開始すると発表した。「LMRバッテリー」は「リチウムマンガンリッチ」と呼ばれる組成構造を採用し、希少かつ高価なコバルトをほとんど含まない。中国勢が圧倒的な優位を誇る安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーと同等のコストを達成しながら、エネルギー密度はLFPバッテリーより33%も高いという。

コストはLFPと同等ながらそれを優に超えるエネルギー密度を達成

アメリカのEV=テスラというほどに、そのイメージは全世界に浸透している。一方、GM、フォード、ステランティス(クライスラー、ダッジ)にEVのイメージは、とくに日本では希薄かもしれない。それでもEVの開発は盛んだ。

その中でもステランティスは全固体電池の実用化にいち早く名乗りを上げ、GMはバッテリーからプラットフォームまで統一コンセプトのもとに自社開発したUltium(アルティウム)を採用したEVを幅広い車種に展開している。昨今は電動化戦略の見直しも相次いでいるが、水面下では技術革新が着々と進んでいるのだ

その最新の事例が、GMとLGが共同開発に成功した次世代バッテリー「LMR(リチウムマンガンリッチ)バッテリー」である。この安価で画期的なバッテリーを搭載した米国製EVが、北米以外で猛威を奮う中国製EVと将来は全面対決(?)するかもしれない。

画像: LMRバッテリーセルの量産試作品。いわゆる角型(プリズムセル)形状を採用してスペース効率にも優れる。

LMRバッテリーセルの量産試作品。いわゆる角型(プリズムセル)形状を採用してスペース効率にも優れる。

NMC同等の性能とLFPを凌ぐコストパフォーマンス

現在主流のNMCリチウムイオンバッテリーは、正極にN=ニッケル、M=マンガン、C=コバルトを塗布したものだ。このうち、ニッケルとコバルトは非常に高価である。夢の次世代電池と呼ばれる全固体電池も、現状では正極にニッケル、コバルトが採用されると見込まれており、価格の圧縮には限界があると予想されている。

かつて、中国のバッテリーメーカーは潤沢な政府補助金を活用して、ニッケル/コバルトに代わる安価なリン酸鉄リチウム(LiFePO4=LFP)を採用するリチウムイオンバッテリーの開発に邁進してきた。当初はエネルギー密度が低く車載向きではないと言われながらも、現在はNMCと同等、もしくはそれ以上の性能を発揮できるようになっている。中国EVの価格競争力が高いのは、LFPバッテリーに負うところが大きい。

攻勢を続けるLFPに対する米国の回答が、GM/LGの「LMR」である。最大の特徴は、比較的安価なマンガンの含有量を大幅に増やしているところ。ニッケルが約35%、マンガンが約65%の組成となり、コバルトはほとんど含まれていない。つまり、生産コストは大幅に下がる。そして驚くのはそのエネルギー密度の高さで、最新のLFPと同等のコストながらエネルギー密度は約33%も増加するという。

さらに形状を角型セル(プリズムセル)とすることでモジュールの部品を75%、バッテリーパック全体の部品を50%削減できるとのこと。安くて小さく、車載に適した高効率バッテリーの開発に成功したのだ。結果的に、LFPよりも割安になるということでもある。中国の戦略物資(?)とも言えるLFPバッテリーに、米国が自前で対抗する構図が出来上がった。

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