水素を用いたアシスト自転車の実用化につながるか
近年、電動アシスト自転車は順調に販売台数を伸ばしており、年間の販売台数が80万台(2023年、経済産業省統計)を超える人気製品となっている。モーターアシストなしの一般的な自転車と比較して最大3分の1の力で漕ぐことができるメリットを活かし、楽に移動できる近距離モビリティとして普及が進んでいると言えるだろう。
今回万博会場に導入されるのは、燃料電池を搭載した電動アシスト自転車と、その燃料を供給する水素生成機だ。水素生成機は、太陽光パネルで発電した電力によって水道水を電気分解して水素を生成し、専用の水素カートリッジに充填する設置型の機械である。
一方の水素燃料電池アシスト自転車はその名のとおり燃料電池システムを搭載して、水素カートリッジに充填された水素を原料に発電、電気モーターで駆動アシストを行う電動アシスト自転車だ。現在主流のリチウムイオンバッテリーに代わって、水素カートリッジと燃料電池システムを搭載する先進的で珍しいタイプだ。

水素の生成・充填を左の機械で、貯蔵・利用を右のカートリッジで行う。
水素カートリッジは容量390ml(長さ:25cm、直径:6cm)とコンパクトサイズで、1本あたり約200Lの水素を貯蔵できる。フル充填した状態で50〜60kmの駆動アシスト走行を可能にするだけでなく、自転車以外にも水素ガスコンロや小型水素発電機などにも利用できる汎用性を持ち合わせている。
また、衝撃・落下・火災など各種安全試験をクリアしており、工具不要で簡単にカートリッジの交換ができるため、気軽かつ安全に利用できることだろう。

「H2 Bike Y800」、「H2 Bike Y900」、「H2 Bike S100」の3機種が導入される。
同製品は、すでに中国で水素自転車のシェアサイクル事業を展開しているモビリティ企業YOUON(ユーオン)が開発したもの。水素生成・充填機とセットで会場運営スタッフの移動用モビリティとして運用が行われているという。
同社によると、万博での実証データを活用して水素ステーションの整備やシェアサイクル事業への展開を進めていくとのことで、実用化に向けた最初の一歩を踏み出した段階と言えそうだ。
電動アシスト自転車をよりカーボンニュートラルなモビリティへと昇華させる「燃料電池式電動アシスト自転車」、技術革新や市販化など今後の展開にも注目である。
【水素アシスト自転車の特長】
走行距離:水素1本(約200L)で約50〜60km
水素カートリッジ:水素吸蔵合金を使用し、低圧設計(1MPa以下)で高圧ガス保安法の適用外
交換:工具不要でカートリッジの交換が可能
安全性:衝撃や落下、火災などの各種安全試験をクリア済み
【水素生成・充填一体機の特長】
外寸サイズ:横×奥行き×高さ=70×30×90cm
使用水量:毎回4L
水素出力:5〜30Kpa
貯蔵圧力:1MPa未満
水素生成能力:最大250L/時、純度99.99%以上の水素を生成
電源:再生可能エネルギー(2000Wの太陽光パネル)使用、AC100V・DC48V
安全性:低圧カートリッジや固体水素を使用し、発火リスクの低い設計