民間超音速旅客機復活に向けた大きな一歩
ブームは超音速旅客機「オーバーチュア」を開発しているスタートアップ企業で、現在はその前段階として実証機「XB-1」での飛行テストを行っている。
この「XB-1」には、「オーバーチュア」に搭載される予定の炭素繊維複合材や航空電子技術、デジタル技術で最適化された空気力学、先進の超音速推進システムなど、効率的な超音速飛行を可能にする最先端のテクノロジーが詰め込まれており、いわば基礎研究実証機として開発・運用されている。
今回のテストフライトでは初めて超音速飛行に挑戦し、高度およそ3万5000フィートにてマッハ1.122を達成して見事「音速の壁」突破に成功したことになる。
「音速の壁」は、航空機が空気中を音速よりも速く飛行しようとする際に立ちはだかるさまざまな困難の総称で、性能が求められる軍用機の分野では戦闘機を中心に超音速飛行が可能な機体が多く存在している。
一方で運航コストや輸送の安全性が求められる民間機の分野では、旧ソ連の「Tu-144」と英仏共同開発の「コンコルド」しか登場しておらず、しかも20年以上も前に退役していることを考えれば、いかにその扱いの難しいかがお分かりいただけるだろう。
XB-1は初飛行に続く11回の有人飛行試験で、亜音速、遷音速、超音速の各段階の検証実験を実施し、オーバーチュアの機体開発につながるデータを収集している。
以下に示す4つのテクノロジーはオーバーチュアにも搭載される予定だ。
1、拡張現実ビジョンシステム:機首に搭載したカメラによる拡張現実ビジョンシステムにより、複雑で重量がかさむ可動式機首を不要とし、優れた滑走路視界を実現。
2、デジタル的に最適化されたエアロダイナミクス:数値流体力学(CFD)シミュレーションを活用した、離着陸時の安全で安定した動作と超音速での効率性を兼ね備えた機体設計。
3、炭素繊維複合材:ほぼすべての部位を炭素繊維複合材で製造することで、強度と軽さを両立した機体構造。
4、超音速インテーク:超音速の空気を吸気して亜音速まで減速し、運動エネルギーを圧力エネルギーに効率的に変換するエンジンインテーク。