ベースモデルはヒョンデ アイオニック5の兄妹車!?
「GENESIS」は日本では馴染みのないブランドだが、2015年より正式に販売がスタートしたヒョンデグループ初の高級車ブランドである。現在は11モデルをラインナップ。韓国はもとより、北米、欧州、中国、中東、豪州など17カ国で販売されており、急速に販売台数を伸ばしている。
このほど公開された「GV60 MIV」のベースモデルとなったのは、ブランド唯一のEV専用車かつ最小モデルであるGV60だ。ちなみにEVアーキテクチャーは日本でも販売されているヒョンデ アイオニック5と共用している。
EVだから可能になった全輪モーター駆動の「スノートラック」システム
上述のとおり、「GV60 MIV」は起伏の多い地形や厳しい気象条件での救助活動用に用いられることを想定したワンオフモデルだ。会議の開催地でありスキーリゾート地として知られるスイス・ダボスに合わせて(?)、雪山での救助活動をサポートするための装備が採用されている。
なかでも目を惹くのが、「スノートラック」と呼ばれるユニークなタイヤ(?)形状とその駆動システム。おむすび型だが、走行中はキャタピラーのように変形して、タイヤとは比べものならない広大な接地面積を常にキープする。ゆえに、起伏の多い過酷な悪路から比較的フラットなオフロードまで、騒音を抑え環境への負荷を抑えて救助活動を行うことができると発表された。システムの詳細について説明はないが、実用化されれば、とくに山岳地帯など普通のクルマでは入って行けない場所での救助活動に大活躍しそうである。
また、EVは一般的に極低温下では充放電能力が低下するが、「GV60 MIV」はそんな悪条件下でもバッテリーの消耗を抑え十分な駆動力を確保するとともに、外部電気機器への給電も可能なV2L(Vehicle-to-Load)機能も搭載している。
岩や樹木などへの接触から車両を守るカーボンファイバー製の巨大なフェンダーフレア、十分な医療用品を積載する広大なラゲッジスペースの確保とルーフラックの装着など、山岳救助車両に必要とされる能力はひととおり揃う。
あくまでワンオフのコンセプトであり、そもそも救助用車両が量産されることは稀なので、今後、どこかの山岳地帯でこのクルマを目にするという機会は恐らくないだろう。とはいえ、搭載されたさまざまな先行技術は今後登場する「GENESIS」の新型車に反映されることがあるかもしれない。なかでも詳細が語られなかった「スノートラック」の技術は、クルマだけでなく建設機械や特殊車両の分野、また思いもよらないカテゴリーで花開くのかもしれない。