鍵を握るインド市場の行方、現地の工場開設に向け再び動き出す
とはいえ、これで疑念が解消するかと言えば答えは残念ながらノーだ。なかでも気になるのは、2025年前半の発売という件(くだり)。現状でほぼ確実と見られるのは、2025年1月に開催予定の2024年第4四半期決算発表会で、モデルYの大幅改良版である通称「JUNIPER(ジュニパー)」の発表が行われるということだけである。モデルQの発表が同時に行われるというのは考えにくい。モデルYジュニパーは、2025年1月にギガファクトリー上海で生産が開始されると見られている。
ドイツ銀行のレポート(もしくはそのコピー)を入手した記者が、モデルYとモデルQの情報(さらに言えばロボタクシーの情報も)混同した可能性はないだろうか。もちろん、低価格のテスラ車が電撃発表されるのが最善だが、上述のとおり、その実現は2027年以降というのが現時点での編集部の見立てではある。ちなみに、モデルYジュニパーは、欧州・中国・米国でプロトタイプのテスト走行が多数目撃されているが、モデルQに関しては皆無であることからも、まだプロダクトとしては道半ばではないだろうか。
とはいえ、モデルQは絵に描いた餅ではないことも確かだ。謎を解くカギは、インド市場である。一時は時間の問題であると言われたテスラのインド工場開設はいったんご破算となったが、それがここへきて再び前進しているとロイターや現地メディアが報道している。
インドでは地元財閥系自動車メーカーのタタをはじめとした企業の成長が著しく、EVを求める新興富裕層も拡大を続けている。実は米中に続く巨大なマーケットなのだ。また、現地で勢力を拡大している低価格帯の中国EVではなく、テスラのようなハイブランド(現地では希少性も相まってテスラ車のブランドイメージはかなり高い)の工場を国内に誘致することにより、将来はモデル3/モデルY、そしてモデルQの3台を欧州や日本を含む東南アジア向けに輸出するメリットもある。つまり、テスラにとってもインド政府にとっても、新工場の建設は互いに大きなメリットがあるのだ。
こうした事情も考慮すれば、大型車よりも中小型車が好まれるインド市場のニーズも相まって、モデルQのような安価で手ごろなサイズ感のテスラ車が新工場の目玉として投入されることはありうると考える。この新工場建設が正式決定になれば、おそらく2026年末、遅くともその翌年には稼働を始める。2027年以降に延期されたというレッドウッド・プロジェクトの進捗とも一致しそうだ。
というわけで、現時点では、残念ながらモデルQの登場にはまだ少々時間がかかると思われる。もっとも、テスラにはサプライズがつきものだ。ひょっとして?という一縷の望みがないではないのもまた本心ではある。その答えは2025年1月に開催予定の2024年第4四半期の決算発表会で明らかになるだろう。