2024年10月4日(現地時間)、ルノーは通常の電池駆動と水素燃料電池駆動を併用する新しいエネルギーシステムを搭載したコンセプトモデル「Embleme(アンブレム)」の概要を発表した。生産が実現すれば、現行の量産車比で生涯CO2換算排出量の90%を削減できるという。まもなく開幕するパリモーターショー(10月14〜20日:現地時間)で実車と技術の詳細が発表される。

EVをベースに燃料電池のレンジエクステンダーを追加

EVの普及は足踏み状態にあるものの、HV/PHEVの販売は好調だ。また、水素を使ったFCEVも乗用車領域での普及を目指すべく、トヨタ、ヒョンデなどすでに量産しているメーカーに加え、BMWもいよいよ市販に向けて本腰を入れ始めた。つまり自動車の電動化は多様化とともに着実に進んでいる。2050年のカーボンニュートラル達成(欧州は2040年目標)に向けて、世界は着実にその知見を蓄え、実行に移しているのだ。

そんな中、突如ルノーが発表したコンセプトモデルがなかなか興味深い。「Embleme(アンブレム、英語読みならエンブレム)」と名付けられたシューティングブレーク/クロスオーバーだが、通常走行ではバッテリーに蓄えた電気によって走行、バッテリーが空に近づくと水素燃料タンクから水素を取り出して燃料電池スタックで発電して走り続ける。つまり、EVとFCEVの機能を併せ持つ“ハイブリッド”なコンセプトモデルだ。

画像: 去る10月4日に突然発表。画像はCGだがパリモーターショーでは実車が技術詳報とともに公開される。

去る10月4日に突然発表。画像はCGだがパリモーターショーでは実車が技術詳報とともに公開される。

日常はEV、ロングドライブでは水素燃料電池も活躍

Embleme は、AmpRミディアムプラットフォーム(旧CMF-EV)をベースにした後輪駆動アーキテクチャーを元に構築されている。モーター、バッテリー、燃料電池スタック、わずか2.8kgの小さな水素タンクなど複雑なシステムを収容しながらもそれぞれのサイズや効率を最適化しており、その総重量は1750kgと同クラスのEVと同等かむしろ軽い。もちろん、フル電動車ならではの低重心と理想的な前後重量配分も実現している。

希土類元素を使用しないモーターの出力は160kW(約218ps)。組み合わされるNMCバッテリーパックの容量は40kWhと控えめながら、満充電で数百kmは走れるとのこと。デイリーユースには十分と言えそうだ。軽量でかさばらず安価、そして環境負荷が低減される。

ロングドライブでバッテリーSOCが低下すれば、燃料電池スタックから供給される電気に切り替わる。コンパクトな水素ボンベは、通常のFCEVのそれに比べればかなり小さいと思われるが、1回の充填で350km走行可能とのこと。EV走行に加え水素を2回充填できれば、途中でバッテリーへの充電作業をすることなく理論上の航続距離は最大1000kmにもなる。行程に水素ステーションが開設されていることが前提ではあるが、性能的には純内燃機関車と互角と言えるだろう。

画像: 全長4800mm、全高1520mm、ホイールベースは2900mmと発表。やや大柄なCセグメントのファミリーカーだ。

全長4800mm、全高1520mm、ホイールベースは2900mmと発表。やや大柄なCセグメントのファミリーカーだ。

EV+FCEVにより生涯CO2排出量を内燃機関車比で90%削減

このプロジェクトの狙いは、車両のライフサイクルで脱炭素化をどこまで最大化できるかにあるという。たとえば、メガーヌE-TechのライフサイクルにおけるCO2 排出量は24トンだ。化石燃料で稼働する同等のモデル(キャプチャーのCO2排出量は50トン)に比べて実質的に半分になる。Emblemeプロジェクトの目標はさらにその先、ゆりかごから墓場までのCO2排出量を5トン、つまり約90%もの削減を目標にしている。

上述したパワーシステムに加え、リサイクル材料、天然素材、再生可能エネルギーに完全に依存する生産プロセス、再利用部品の実装、循環性など、製造過程における実行可能性を隅々まで検討しているようだ。

車両のデザインは魅力的なフォルムであるとともに、お馴染みのBWT アルピーヌF1チームの最先端テクノロジーが投入された。たとえば、サイドミラーはホイールアーチに統合されたカメラに置き換えられ、フロントワイパーはボンネットの下に完全に隠され、ドアハンドルも車体に埋め込まれている。

フロントバンパー左右から導かれる走行風は、ボンネット上に設けられたアウトレットから抜けてダウンフォースの向上に貢献している。ホイールはフルディスクで、空気の流れをボディに沿って導いている。 F1にヒントを得たフラットボトム、下方および後方に傾いて空気の流れのバランスを取り、空気抵抗を最小限に抑えるアクティブディフューザーによって強化されている。結果的にCd.値は0.25と非常に高いレベルを実現し、航続距離の延伸に寄与している。

画像: サイドミラーはフロントフェンダーアーチと一体化(写真上の小さな突起部分)。また、バンパー左右のインレットから導入されたエアはボンネット上に設けられたアウトレットに抜けてダウンフォースを向上させる。

サイドミラーはフロントフェンダーアーチと一体化(写真上の小さな突起部分)。また、バンパー左右のインレットから導入されたエアはボンネット上に設けられたアウトレットに抜けてダウンフォースを向上させる。

今回のプロジェクトには、ルノーを中心にアンぺア、BWT アルピーヌF1チームほか、20社以上の企業が参加しているという。将来、Emblemeが市販されるかどうかは不明だが、プロジェクトの進捗の中で得られた知見は、それぞれの企業にフィードバックされ、また新たなアイデアが誕生してくるだろう。ともあれ、10月14日にはどんな説明があるのか楽しみに待ちたい。

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