1970年代の息吹を若手デザイナーが蘇らせた
今回発表された「R17エレクトリック」は、1971年にR15として発売され途中バージョンアップを挟んで1979年に「R17」として生産終了するまで、欧州で人気を博したR17がモチーフとなっている。手掛けたのはフランスの若手デザイナー、オラ・イト氏。1977年生まれなので、氏が物心ついたころにはすでにR17はモデル末期に差し掛かっていたことになる。
同氏はR17エレクトリックのデザインの狙いについて、以下のようにコメントを寄せている。
「ルノー17のような1970年代を象徴するクルマを現代に蘇らせるのは、実に刺激的でやりがいのある挑戦でした。ルノーとの共同作業ですが、私の芸術的なビジョンを明確に盛り込むことができました。私自身のデザインシグネチャーであるシンプルさを活かしながら、流れるようなシルエット、ダイナミックな力感、そして合理性の観点からより現代的な外観を与えたのです」
ルノーは「市販の予定はない」と言うが……
出来上がったR17エレクトリックは、1970年代の空気感を漂わせつつも、単なるクラシックカーの復刻ではなく、モダンで絶妙なカーブを採り入れたルーフラインや前後フェンダーなどイラ氏の独創的な作品となっている。ヘッドランプやリアコンビランプはLED化されている。オリジナルのR17を彷彿とさせるのは、繊細なAピラーとユニークなウイング型サイドミラー、リアのルーバーあたりだ。
インテリアは、トップとボトムがフラットになった2本スポークステアリングが目を惹く。ドライバーの前には4分割された正方形のデジタルメーターが配置されている。オリジナルR17は機械式の丸型4連メーターだが、R17エレクトリックは正方形になり、それぞれが赤いグラフィックの小さな画面を備えているのがユニークだ。
コンソールには大画面のインフォテインメントディスプレイがレイアウトされ、昨今のEVとはやや趣を異にする。シートは花びらをイメージしたデザインを採用し、表皮には上質なメリノウールヘザーサテンとウールブークレを部位によって使い分けている。
R17エレクトリックは、9月12日から15日まで開催されるシャンティイ・アーツ&エレガント・リシャール・ミル・コンペティションで披露され、10月14日から20日までパリ・モーターショーでも展示される。
なお、ルノーは、このクルマはあくまでワンオフのプロジェクトで市販する予定はない、とコメントしている。とは言え、過去のレストモッド・プロジェクトが手掛けた3台はいずれも市販化、もしくはそれを前提に開発が進められているのも事実。R17の復活も、可能性はありそうだ。
2021年に始まったレストモッド・プロジェクトはすでに3モデルを公開済み。第一弾はルノー4をオマージュした「SUITE N°4」。今回のパリ・モーターショーでは量産モデルが出品される。またルノー5をオマージュした「5 Diamantプロトタイプ」はすで新型R 5 E-Tech electricとして今年9月から生産を開始済み、また2023年には「トゥインゴ」を発表しており、こちらも2026年前後には発表されそうだ。