2024年7月26日に100年ぶりのパリ五輪が開幕し、開会式では「自由、平等、博愛」の理念と歴史が世界に向けて発信されましたが、大西洋の反対側ではアメリカ大統領選挙から目を離せない状況です。トランプ候補が暗殺者の銃弾を紙一重でかわし、指名を受けた共和党大会が異常に盛り上がった矢先、バイデン大統領がついに選挙戦からの撤退を表明しました。人気がないと言われるハリス副大統領を指名しての引退宣言ですが、そのハリス氏は2日間で民主党内の支持を固める素早い動きをみせ、若年層や黒人有権者の支持率は一挙に高まり、選挙戦は接戦の様相を呈しています。返り咲けば、バイデン政権が進めた気候温暖化対策やEVシフトを初日に破棄すると宣言するトランプ氏の優勢が伝えられていますが、次期大統領が「青(民主党)」か「赤(共和党)」かによって自動車産業はどういった影響を受けるのでしょうか。(タイトル写真はテスラ)
「それでもなぜ、トランプは支持されるのか」
トランプ前大統領は、4つの案件で刑事訴追を受けており裁判が進行中です。そのうち、元ポルノ女優に口止め料を支払った件については有罪判決が出ているほか、2020年の大統領選の結果を不正だとして認めず、ジョージア州の裁判所に圧力をかけて投票結果を覆そうとした疑惑、翌年1月6日に暴徒化したトランプ支持者の連邦議会へ突入を扇動したという疑い、自身の財産を大きく見せかけて事業を有利に運ぼうとした不正など、国の最高統治者がこれほどの嫌疑をかけられた例はアメリカ史上ありません。6月の両候補者の討論会でもバイデン大統領を「史上最低の大統領」と何度も罵りましたが、CNN テレビはトランプ氏の発言には少なくとも30回の嘘や事実歪曲があったと分析しています。
2016年にはヒラリー・クリントン元国務長官が初の女性大統領になるのを大方の予想を覆して阻んでホワイトハウス入りしたトランプ氏ですが、その発言の不正確さや予測不可能な行動にさすがに危惧を募らせた有権者は、2期目を容認しませんでした。ところが、コロナ禍とインフレを抑え、景気の腰を折ることなく経済運営には成功しているように見えるバイデン氏を数ポイント引き離す支持を集めて、今回また共和党大統領候補に復活してきました。選挙の結果を左右するスウィングステート(※1)では、ほぼ全てでトランプ氏が優勢という状況下で6月の討論会も行われました。※1:ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、アリゾナ、ネバダの7州