スズキが「ジャパンモビリティショー2023」に参考出品した折りたたみ式電動モペッド「e-PO(イーポ)」が、6月上旬より公道での走行調査を開始した。原付一種としてナンバーを取得し、さまざまな道路状況を実際に走ることで、日常での使い勝手や課題の洗い出しを行う。この調査を通じて今後の製品化につなげていく。

原付バイクと同じ上限30km/hを可能にした電動モペッド

昨年秋に開催されたジャパンモビリティショー(JMS2023)のスズキ ブースで話題となった、折りたたみ式電動モペッド「e-PO(イーポ)」。

パナソニックサイクルテックとの共同開発から生まれたイーポは、パナソニック製リチウムイオン電池を搭載し、「自転車モード」、「電動アシストモード」、「フル電動モード」という3つの走行モードが選べる。

画像: イーポは「自転車」「電動アシスト自転車」そして「フル電動」の走行モード切替が可能な電動モペッド。

イーポは「自転車」「電動アシスト自転車」そして「フル電動」の走行モード切替が可能な電動モペッド。

展開時のサイズは全長1531×全幅550×全高990mm。モーターの定格出力は0.25kW/16Ahだ。フル電動モードでの最高速は原付バイクと同じ30km/hが可能となり、“第一種原動機付自転車”として出品された。

JMS2023での発表時のリリースによれば、車体や駆動バッテリーはパナソニックサイクルテックから発売されている電動アシスト自転車「オフタイム」がベース。これにスズキ独自のモーター制御を加え、ブレーキもディスクに変更して制動力を高めることで、電動モペッドとしても活用できるように改良を加えている。

画像: JMS2023に参考出品されたイーポ。パナソニックの電動アシスト自転車「オフタイム」をベースにスズキ独自のモーター制御を採用。ブレーキも強化されてディスクタイプに。

JMS2023に参考出品されたイーポ。パナソニックの電動アシスト自転車「オフタイム」をベースにスズキ独自のモーター制御を採用。ブレーキも強化されてディスクタイプに。

画像: ナンバープレートの取り付けブラケットは原付バイクと同サイズサイズになっていた。

ナンバープレートの取り付けブラケットは原付バイクと同サイズサイズになっていた。

50cc原付の生産終了が電動モペッド普及のきっかけに?

イーポ誕生の背景には、いわゆる“50cc原付バイクの2025年問題”が関係している可能性がある。50cc以下のエンジンを搭載する原付一種のバイクは、排出ガス規制の強化(「令和2年排出ガス規制」)により2025年10月末以降は生産できなくなる(在庫車の販売は継続)。

この新規制導入にあたっては、継続生産車は2025年10月末まで生産に猶予が与えられていたが、スズキ、ホンダとも期限終了を待たず50cc原付バイクの生産を2025年5月で終了すると見られている。技術的には規制適合も可能だが、それを実現するにはコストがかかりすぎるためだ。

画像: 折りたたみ式を採用できるのも電動モペッドならでは。50cc原付バイクでは考えられなかった利用法も生まれる。

折りたたみ式を採用できるのも電動モペッドならでは。50cc原付バイクでは考えられなかった利用法も生まれる。

代わって登場するのが、いわゆる“新規準原付(仮称)”。現在は小型二輪(原付二種)に区分されている排気量50cc超〜125cc以下の「小型」のエンジン出力を現在の原付一種と同等にデチューン(4kW以下)して、新たに原付免許で乗れるようにしたものだ(現行の125ccバイクに原付免許で乗れるようになるわけではない)。

言い方を変えれば、排気量で区分されている現在の原付は、新たに馬力で区分されるようになるということ。今後各社から発売される予定の新規準対応原付一種(原付区分の変更にともなって名称変更される可能性あり)は、車体サイズや重量、そして価格が上昇すると見られている。

画像: 電動モペッドは「モーターを止めた状態で走行しても原付一種に該当」。車道通行、ヘルメット着用を始め原付一種バイクと同じルールが適用される。

電動モペッドは「モーターを止めた状態で走行しても原付一種に該当」。車道通行、ヘルメット着用を始め原付一種バイクと同じルールが適用される。

そこで、50cc原付の代替的な役割を兼ねるモビリティとして注目されているのが、原付一種登録ながらペダルを漕いで自転車として走ることもできる電動モペッドなのだ。既存の電動アシスト自転車とメカニカルパーツの多くを共有できれば、コストの上昇も抑えられる。長距離走行でバッテリーが切れても、漕いで走ることができる(ただしモーターを停止していても原付一種なので歩道走行は不可)。

今回の公道走行調査は5台のイーポが用いられ、スズキの本社がある静岡県浜松市を中心にデータ収集が行われる。実際の路面状況や交通状況下で走行することで、日常の使い勝手や実際に走行することで見えてくる課題など今後の製品化に向けての開発に活かしていくとのこと。大手メーカーの参入によって、新たなモビリティが市民権を得る可能性が俄然高まってきたと言えそうだ

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