ZEROシリーズで加速するSDV化。AD/ADASを中心に新たな価値
欧米の自動車メーカーの多くがEVへの投資計画見直しを発表するなか、ホンダの三部社長は「すべて想定内であり、かねてよりのホンダの計画に揺るぎはない」ことを強調した。2輪や4輪などの小型モビリティの電動化にはEVがもっとも有効なソリューションであり、2030年にはEV/FCEVのグローバル販売比率を40%まで高め(EV200万台)、2040年にはその比率を100%とする目標は今後も変わらない。勢い、会見ではEV戦略、なかでも急速に進行しているSDV化を中心に説明がなされた。
三部社長は「とくにAD(自動運転)/ADAS(高度運転支援システム)の領域は劇的に進化する。その新しい波は、2026年からグローバルで発売開始される次世代EVのZEROシリーズ(Honda 0シリーズ)」から始まると語り始めた。
最初に発売されるのは、CES2024で初公開された2台のコンセプトモデルのうち、「SALOON」と呼ばれる4ドアサルーンだ。“Thin(薄く)”、“Light(軽く)”、“Wise(賢く)”を謳い、コンセプトモデルにかなり近いデザインで市販されるという。
●“Thin(薄く)”
新開発のEV専用プラットフォームを初採用。他社EVとの平均値比で10%以上低く、前後のオーバーハングも同じく10%短縮される。併せて新開発の小型e-Axcelと超薄型バッテリーパックを車体中央に低重心でレイアウトすることで、新時代のMM(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想を具現化しているという。
●“Light(軽く)”
EVといえども操る喜びは無視できない。「SALOON」の市販モデルはホンダの市販EVよりおよそ100kgの軽量化を実現しながら、ASIMOの開発で蓄積したロボティクス応用技術(「姿勢角推定ロジック」)や4輪の駆動力を最適配分(「3Dモーション統合制御」)も併用することでホンダ車らしい爽快なハンドリングも実現する。モータースポーツ活動で培った高効率なパワーユニットと空力技術も盛り込み、ZEROシリーズ全車で300マイル(およそ483km)以上の航続距離も実現する。
●“Wise(賢く)”
これこそがホンダ次世代EVの最重要エレメントだ。ソフトウェアプラットフォーム(「Honda e:アーキテクチャー」、いわゆるビークルOS)の実装が始まる。その上にはさまざまなアプリケーションが折り重なり、クラウドサーバーとつながることで、常にユーザーに最適な機能を提供する進化するEVだ。当初は、ボディコントロールやセンシングなどゾーンごとのドメインアーキテクチャーから始まるが、2020年代後半には車両全体の機能をコアECUによってコントロールする「セントラルアーキテクチャー」に昇華される。
ZEROシリーズは、「SALOON」を皮切りに2026年中には「中型SUV」、「エントリーSUV」、2027年には「3列シート大型SUV」の発売を予定している。さらに「コンパクトSUV(2028年)」、「スモールSUV(2029年)」、「コンパクトセダン(2030年)」などグローバルで7車種を発売する計画だ。登場年次が後になればなるほど、セントラルアーキテクチャー化が進んでいく。