日本ではEVの普及が徐々に進んでいます。“EVが減速”という報道はありますが着実に台数が増えていることは間違いありません。ただ、EV普及が加速するためには充電施設の数が課題となってきます。果たしてこのあたりの状況はどうなっているのでしょうか。“卵が先か、鶏が先か”という視点で考えてみました。

相互に依存するEVと充電施設はまさに卵と鶏の関係

なぜ、EVと充電設備が、卵と鶏の関係なのかといえば、その両方が揃わないと、どちらも増えないというのが理由です。

大前提となるのが、EVは充電が必要だということです。そのため充電設備の数が限られると、非常に使い勝手が悪くなります。充電設備のないエリアには、行くことができないからです。ですから充電設備のないエリアに住んでいる人は、EVを購入しようとは考えないでしょう。

一方、充電設備側から見ると、EVがないと商売になりません。EVを所有する人のいないエリアに、充電設備を用意しても、誰も充電にやってきません。ですから、EVのないところには充電設備が設置されないことになります。

つまり、充電設備がないとEVを購入しようと思わない。EVがいなければ充電設備は設置されないということになります。まさに、卵がないと鶏が生まれず、鶏がいなければ卵は生まれないということになります。そして、卵と鶏のどちらが先かと言う話になるわけです。

中長期的には整備は過不足なく進むはず

日本の場合、街中の充電設備は、政府主導のもとで高速道路や役所などにおけるインフラサービスとして普及が始まりました。日本の急速充電の方式などをまとめたチャデモ協議会の調査によると、日本国内の急速充電設備の数は、2016年の時点で全国約6500か所に達しており、それ以降は微増を持続して、2023年で約8000か所にまで増えています。高速道路の主要SA/PAには、ほとんど急速充電器が設置されています。また、日産と三菱自動車のディーラーの大多数にも急速充電器が備えられています。

ある意味、街中の急速充電器は、一定数を満たしていると言っていいでしょう。次なる充電器の普及は、集合住宅や月極駐車場などがターゲットとなっています。

充電施設を設置する事業社の中にはこの例えで言うと「充電インフラが先、その後EVシフトへ」と方針をはっきりと言っているところもあります。行政の補助金と相まって、中長期的には充電施設の整備は過不足なく進んでいくことが期待できるでしょう。ただし、短期的には充電施設事業社は乱立気味なので、この1、2年で淘汰があると言われています。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

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