開発宣言からわずか3年余で発売を実現した
スマホを始めとしたスマート家電で日本でもお馴染みのシャオミが、EV市場参入を宣言したのは2020年12月のこと。それからわずか3年余で実車発売にこぎ着けたスピード感には驚くしかない。すでに2023年12月28日には、実車および採用された新技術を公開しているので実質的には3年でEV1台をゼロから開発したことになる。
SU7は中国市場ではプレミアムセグメントに属するミディアムセダン。ボディサイズは全長4997×全幅1963×全高1455mm、ホイールベースは3000mm。ベンチマークであると名指しされたテスラモデル3と同じセグメントになる。今回販売が開始されたのは、基本グレードとなる後輪駆動で400Vアーキテクチャーを採用する「SU7」とその上級版となる「SU7 PRO」。そしてポルシェタイカンをベンチマークとする全輪駆動で800Vアーキテクチャーを採用する「SU7 MAX」だ。
テスラモデル3の評価ポイントはほぼ超えたと自信
搭載されるのは自社開発のいわゆる3-in-1モーター。SU7には「HyperEngine V6」、SU7 PROには「HyperEngine V6s」が搭載される。V6は最高出力299ps(220kW)/400Nm、V6sは374ps(275kW)/500Nmというスペック。どちらも最高回転数はトップクラスの2万1000rpmを実現している。
さらにSU7 MAXはデュアルモーター化され、システム総出力は673ps(495kW)/838Nmまで向上。0→100km/h加速2.78秒、最高速265km/hに達する。さらに2025年にはさらなる高性能モーターとして、最高回転数2万7200rpm、578ps(495kW)/635Nmを実現する「Hyper Engine V8s」も追加されるという。
テスラの最速車であるモデルSプラッドやタイカンターボを凌ぐ高性能を発生し、SU7 MAXの上に位置するハイパフォーマンスグレードとして追加される見込みだ。またモーター最高回転数を3万5000rpmまで高めた最高峰の次世代モーターの開発も急がれている。
搭載されるLFPバッテリー(CATL麒麟バッテリーセル使用)の容量はSU7が73.6kWh、SU7 PROが94.3kWh。どちらも486Vアーキテクチャーを採用しており、前車の航続距離はCLTCモードで700km、後車は830kmだ。SU7はわずか5分間の急速充電で138km相当の走行距離を回復、15分ならば350km相当の充電が可能だと発表された。
パフォーマンスモデルのSU7 MAXには871Vアーキテクチャーが採用され、バッテリー容量は101kWhに増量、航続距離はCLTCモードで810kmと発表されている。こちらは5分の急速充電で220km、15分で510km相当の走行距離を回復可能だ。
リアアンダーボディにギガキャストを採用して生産時間短縮
リアアンダーボディには、72個の部品を1つに統合するギガキャストを採用する。「Xiaomi Hyper Die-Cast T9100」と名付けた自社開発の巨大なダイキャストマシンの締結力は9100tと強大なもの。さらにダイキャスト合金の材料にはシャオミが独自に配合したXiaomi Titans Metalを採用し、強度、弾力性、安定性の完璧な組み合わせを実現したとしている。これら自社開発技術の集積で生産を垂直統合して、車全体の重量を17%削減し、生産時間を45%も短縮しているのがシャオミの強みでもある。
自動運転技術でスマホメーカーの本領を発揮
自動運転領域に関してもシャオミの培ってきたテクノロジーをふんだんに投入。SU7 MAXには、LiDAR、11台の高解像度カメラ、3台のミリ波レーダー、12台の超音波レーダーが搭載されている。
たとえばカメラによる認識範囲はわずか5cmから250mまでと広範囲。都市部ではより広い視界、高速シナリオでは視野が広がり、狭い駐車場では他車と接触せずにぎりぎりまで寄せることができる。また、ロードマップ作成基本モデルは、道路状況をリアルタイムで認識し、より合理的な運転軌道に切り替えるだけでなく、変則的で複雑な交差点も高解像度の地図に頼ることなくスムーズにナビゲートする。
もちろん車載OSは、シャオミの誇る「HyperOS」を搭載。車両はもちろん、同OSを搭載するスマホやタブレットをシームレスに統合し、瞬時に車載アプリケーションに変えることがでる。またiOSの接続を可能にする専用のピンポイント拡張接続部があり、iPadやiPhoneのプラグアンドプレイ機能もサポートしている。
そして注目の価格だ。SU7が“21万5900元(約452万5000円)”、SU7 PROが“24万5900元(約515万4000円” 、そして全輪駆動のSU7 MAXは“29万9900元(約628万7000円)”。およそ考えうる先進装備が初めから搭載されてこの価格を実現したのは驚異であり脅威でもある。
テスラやポルシェはもちろん、Zeekrを始め同じ中国のプレミアムブランド、さらには日本のレクサスも商品戦略の見直しを迫られるのは必至だ。家電ナンバーワン・ブランドが放ったEVの影響はとてつもなく大きい。