日産の自動運転モビリティサービスには停留所がある
自動運転とひとことで言っても、決まったルートだけを運行するもの、発着地点を自由に設定できるロボタクシーなどさまざまあるが、日産による自動運転モビリティサービスは「オンデマンドの乗り合いシャトル」としている。この言葉だけではいまいち理解できないが、つまり停留所で乗って、目的地までのルートは自在に変化させられる乗り合い車両ということになる。
2025年度に始まるみなとみらい地区でのサービスでは、専用アプリ上にデジタルの停留所が表示され、希望の発着地点を入力するとシャトルがやってきて乗車、経路の途中に別の利用者がいれば乗り合い、それぞれの目的地(停留所)へ向かうというもの。本サービスの車両にセレナを採用したのは、車室内が広いこと、そして乗客をより多くして乗り合いサービスの質を向上させる目的もあるようだ。
この自動運転モビリティの核となるのがルーフに鎮座する、また前後バンパーやフェンダーなどに埋め込まれたセンサー類だ。今回の発表時点でセレナベースの車両は開発段階のためリーフベースの車両が展示されたが、こうした基本構成はほぼ同じ。それでも、全高とセンサー位置が30cm以上高くなるため、感度はより高精度になるのだという。
6つのLiDARと10個のレーダー、14個ものカメラが周囲360度150m先までを認識し、他車や歩行者、自転車などを検出しながら運行する。システムによる自動運転の操縦にAIを活用するメーカーもあるが、日産はエンジニアが設計し打ち込んだユースケースをベースに判断、自車の動作を決定するのだという。
みなとみらい地区を例に言えば、この地域で想定される「自車走行車線でクルマが駐車している」や「車道に人が侵入してきた」などのユースケースは2000ほどで、天候や気温、車線数や乗車人数などの環境データと掛け合わせることで安全な走行を確保するそうだ。
これほどのユースケースを打ち込んでも、システムでは判断できない場面もある。例えば「道路工事により反対車線を走行するよう誘導された時」、「左折する交差点の直前に、施設入場のための渋滞ができている」など、通常のルールどおりではない行動を取らざるを得ない場合は、遠隔監視するセンターの人がコマンドを送って運行を支援・続行させるのだという。
自動運転モビリティであるが、2025〜2026年度のフェーズ1の段階でセーフティドライバーは運転席に座っていることになる。しかし、この段階での実証で乗っている必要がないと判断されれば、次のフェーズ2以降は無人で走行することも考えられるし、さらに言えばハンドルも必要なくなるかもしれない。各フェーズで日常的な走行データを取得して、さまざまな検証が行われ、そして進化していく。
事業化される2027年度までわずか3年ほど。自動運転を体感できる社会はもうすぐそこまで来ているようだ。