スタートアップとは、新規に立ち上げた事業もしくはその事業者のこと。革新的なアイデアや技術で社会にイノベーションを巻き起こす。今回ご紹介する「アラルキス」は、2024年1月に英ロンドンで創業したばかり。バッテリー技術をコアとするテック系スタートアップだが、早くも超高性能ハイパーEV「サンドストーム」の発売を宣言した。まだ誰も知らない驚愕のEVパフォーマンスを覗いてみよう。

ハイパーEV「サンドストーム」は20台の限定生産

クロアチア発の「リマック ネヴェーラ」の登場によって、いまやEVでもハイパーカーが成り立つことは周知の事実となった。ちなみにネヴェーラは4モーターで1914psというモンスター。0→100km/h加速はわずか1.81秒、最高速はおよそ412km/hという、桁違いのハイパーマシンだ。

少量生産ながら量産EV最速、ニュルブルクリンクのコースレコード記録など輝かしい成功をおさめているが、もとはと言えば、2009年に当時21歳だったマテ・リマック氏が設立したスタートアップである。いまや、アストンマーティン、ポルシェ、ケーニグセグなど名だたるスポーツカーブランドとの協業を進め、名門ブガッティの経営権を取得するまでに成長している。

そんなハイパーEVのニッチなマーケットに、新たなチャレンジャーが名乗りをあげた。英国ロンドンのコベントガーデンに本拠を置く「アラルキス(Ararkis Automobili Ltd)」だ。その設立年は2024年1月18日、つまりまだ会社が出来てから1カ月余りしか経っていない。にもかかわらず、すでに公式Webサイトを立ち上げるとともに、すべて自社開発による新型ハイパーEVまで発表したのだから驚く。

「サンドストーム(Sandstorm)」と名付けられたこの新型ハイパーEVは、20台の限定生産。価格は衝撃の“200万ドル”、つまり邦貨換算すると3億円オーバーである。値段はあってないような世界の話だけに、実際にオーナーの元に届くときにはどのくらいの価格になるのかは想像もつかない。

画像: 「サンドストーム」はEVにもかかわらずリアエンドにエキゾーストパイプ風のデザイン処理が採用されている。

「サンドストーム」はEVにもかかわらずリアエンドにエキゾーストパイプ風のデザイン処理が採用されている。

電動化が従来のパワートレーンを超えることを証明する

スペックは、0→100km/h加速が1.5秒、最高速は300km/h。航続距離500km(WLTP?)、バッテリー容量は115kWhと発表されており、急速充電器を使えば30分でSOC80%まで充電可能だという。

駆動は車両の前後に配されたモーターによって行われる。スピード、スタイル、そして持続可能なイノベーションを追及するアラルキス社のブランドアイコンとして、同社のスタートを世に知らしめる役割が与えられている。

画像: 技術力をアピールするのにスポーツカーを用いるのはテスラも採用した手法ではある。

技術力をアピールするのにスポーツカーを用いるのはテスラも採用した手法ではある。

アラルキス社が強調しているのは、何よりも従来のハイパーカー(EVを含む)では考えられない技術の革新だという。「電動化が従来のパワートレーンの性能水準に追いつくのではなく、それを超えることを率先して証明していく」ことをコミットしている。 0→100km/h=1.5秒という驚愕の加速性能はあくまで“効率”を追及した結果であり、目標ではないというのが同社の考え方だ。

モーターは単なる機械の枠を超えた存在であり、パワー、効率、イノベーションの限界を拡張するというコミットメントを象徴する。自社開発のシャーシはカーボンファイバーとアルミを組み合わせて、軽量化だけでなく並外れた剛性を実現しているという。

コレクターが欲しがる芸術作品を目指す

スタイルはどこからだれが見てもハイパーカー。スピードを求めていくとそのスタイルは「似たりよったり」になりがちだが、サンドストームは“宇宙からやってきたのではないか”と思わせるほど。美学と性能のシームレスな融合を目指した結果だという。コレクターの食指を動かすにふさわしい仕上がりは、高性能でありながらだれもが欲しがる芸術品になることを目指している。

画像: 宇宙船のようなキャビンは“効率”を求めた結果。アヴァンギャルドなデザインには理論的な裏付けが伴っているという。

宇宙船のようなキャビンは“効率”を求めた結果。アヴァンギャルドなデザインには理論的な裏付けが伴っているという。

と、ここまで「Sandstorm」のあらましを紹介したが、実は肝心の実車はまだない、とういう事実はお知らせしておいた方がいいだろう。ここに紹介している画像はすべてまだCGなのだ。この絵に描いた餅が本物の餅になるまで、まだしばらくの時間はかかりそうだ。

創業からまだ1カ月余りしか経っていないスタートアップが、ここまで進めた熱意は、ハイパーカーの世界に驚異のイノベーションをもたらす可能性もある。テスラやリマックもかつてはスタートアップと呼ばれた。アラルキスの健やかな成長(?)をこれから見守っていきたい。

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