ルーシッド(Lucid Motors)は元テスラのエンジニアであり、モデルSの開発を手掛けたピーター・ローリンソンが率いるアメリカのEVスタートアップ。創業は2007年で、当時の社名は「Ativa」。2019年にローリンソン氏のCEO就任とともに現在の社名に改められた。(タイトル写真はルーシッド エアの最上級グレード「サファイア」)

アストンマーティンも納得する、米の超高級EVスタートアップ

最高級ラグジュアリーEVの開発販売、EVパワートレーン、バッテリーマネジメントシステムの開発を手掛け、さらにエネルギーソリューション(家庭や施設への双方向電力供給)まで視野に入れているところはテスラに通じるものがある。同社の手掛ける超高級EVは、実店舗を通さず直接ユーザーに届けられるところもまたしかりだ。

天才と呼ばれるローリンソン氏に寄せられる業界の期待は非常に高く、アストンマーティンの次世代モデルに採用されるベース技術もルーシッドから供与される。また2022年12月にはパナソニックとバッテリー供給契約を結んでいる。ちなみにフォーミュラEのバッテリーパックもルーシッドが供給している。

最先端のソリューションを搭載した超高級EVサルーン「エア」

同社初となる量産EVの「ルーシッド エア(Lucid Air)」は、2016年にプロトタイプを発表後、2021年から生産が始まった。900Vのアーキテクチャーを採用した大型高級サルーン(後1モーターの後輪駆動/前1+後1モーターの4輪駆動/前1+後2モーターの4輪駆動の3タイプをラインナップ)だ。バッテリーの生産以外、ほぼ自社で開発・生産しており、なかでも高度にモジュール化されたコンパクトな駆動用モーターユニットが、同社の技術力の高さをうかがわせる。

画像: 電池はLG製だがあとは自社開発。3モーターの「サファイア(写真)」でも駆動メカニズムは実にコンパクト。

電池はLG製だがあとは自社開発。3モーターの「サファイア(写真)」でも駆動メカニズムは実にコンパクト。

その圧倒的なアドバンテージは、バッテリーマネジメント技術にある。「Wunderbox」と呼ばれる充電ユニットは、350kWの急速充電器を使用すれば32.2km/分、482km/20分という驚異的な充電速度を実現。さらにV2GやV2Vによる双方向充電・蓄電機能(同社は「RangeXcange」と呼んでいる)も搭載するなど、世界最先端を行く量産EVと呼んで差し支えないスペックを持つ。

画像: クルマ対クルマ(V2V)のほか電力会社の電力系統にも接続して相互に電気のやり取りも可能。

クルマ対クルマ(V2V)のほか電力会社の電力系統にも接続して相互に電気のやり取りも可能。

ちなみに3モーター・1234hp・航続距離687km(EPA)を誇る最上級グレード「サファイア」の車両価格は249,000USD(約3677万2000円)、ベーシックグレードの1モーター・430hp・航続距離674kmの「ピュアRWD」は77,400USD(約1143万2000円)。好景気が続く北米にあっても、かなり高価なEVではある。

画像: ルーシッド・エアの3サイズは全長4975×全幅2194×全高1407mm。ホイールベースは2959mmもある。

ルーシッド・エアの3サイズは全長4975×全幅2194×全高1407mm。ホイールベースは2959mmもある。

最新モデルは3列シートSUV、生産開始は2024年後半を予定

同社の最新モデルは、2023年11月のロサンゼルスオートショーで発表した3列シートのラージSUV「グラヴィティ(Lucid Gravity)」。こちらは2024年後半に量産が始まる予定だ。詳細はまだ明らかにされていないが、800hp以上のパワー、700kmを超える航続距離、0→96km/h加速=3.5秒以下、80,000USD(約1183万円)以下のスターティングプライスになることが予告されている。

画像: 2023年11月に開催されたLAオートショーで初公開された同社の量産EV第二弾が「グラヴィティ」。2024年後半から生産開始予定だ。

2023年11月に開催されたLAオートショーで初公開された同社の量産EV第二弾が「グラヴィティ」。2024年後半から生産開始予定だ。

「エア」、「グラヴィティ」ともに現在のところ左ハンドル仕様のみで国内導入の予定はない模様。しかし、ローリンソンCEOは、英国や豪州そして日本など右ハンドルの国々にも関心を示しているようだ。

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