2023年に二度にわたって大幅な値下げが実施されて注目を浴びることとなった、テスラのミドルサイズSUV「モデルY」。今回、そのラインナップの中でも605kmの航続可能距離(WLTCモード)を実現した「モデルY ロングレンジAWD」に試乗して、その魅力を改めて確認した。

インテリアの印象はデザインも操作方法もシンプルに尽きる

2023年、テスラは過去最高の約180万台もの販売台数を記録したが、このうちSUVの「モデルY」はプラットフォームを共有する兄弟車のセダン「モデル3」とともに、同社の主軸商品として170万台という数字を積み上げた。そしてモデルYが単独で記録した120万台以上という数字をもって、テスラは「モデルYは世界で最も売れている自動車」と喧伝している。

そんなモデルYのサイズは全長4760×全幅1925×全高1625mm。全長だけで判断すれば大きめのミドルサイズSUVになるものの、全幅はかなり広い。写真で見るとコンパクトな印象を受けるかもしれないが、実際のモデルYはけっこうグラマラスなのだ。

車内空間はルーフ全体を覆いつくす1枚ガラスによりほどよく明るく、しかも余裕ある広さを持つ。これはボディサイズの大きさに由来するところだけではなく、極端なまでにシンプルなインテリアデザインも広々としたイメージを増幅させているようだ。

画像: デザインと操作性を徹底的にはシンプル化されたコクピット。SUVとはいえ車高はそれほど高くないので、目線の高さはクロスオーバーといった印象。

デザインと操作性を徹底的にはシンプル化されたコクピット。SUVとはいえ車高はそれほど高くないので、目線の高さはクロスオーバーといった印象。

コクピットの物理的なスイッチはとことん排除されているし、ディスプレイもセンターにひとつだけ。まるでミニマリストのリビングのよう。ここまでなにもないコクピットは、今までテスラ以外で見たことがない。これはテスラならではの強い個性といえるだろう。

ちなみに、テスラ車は走行前のエントリー作法も個性的だ。キーはカード状。ドアロックの開錠はBピラー部にカードをタッチするだけ。スターターキーはないが、センターコンソールのドリンクホルダーの後ろにカードをタッチする。そして、ハンドルコラムの右にあるレバーで「D」を選択すれば、いつでも出発OK。スタートボタンもパーキングブレーキのスイッチもない。あっけにとられるほどシンプルなのが、テスラの流儀なのだ。

モデルYは穏やかさと俊足さの二面性を持つ

走り出しのモデルYは「穏やか」そのもの。静かだし加速はスムーズ。足まわりは、2トン近いヘビー級の車両重量を支えるだけに、基本的にバネは硬めだ。ロールとピッチングは少なく、乗り味はフラットライドだが、ダンパーまで締め上げているわけではないので路面の段差からのショックは丸くいなしてくれる。

ハンドルは重めながらも微小舵の反応は緩く、スムーズで穏やかな加速と合わせ、流れに乗って走っている限りはとてもリラックスした気分で過ごせる。この、ある意味スポーティとは真逆の走りのフィーリングが「安心感」として感じられる。

しかし、高速道路や自動車専用道の合流路でアクセルペダルを床まで踏み込めば、驚くほどの強力なダッシュを見せる。フロント158kW/240Nm、リア220kW/350Nmの2モーターが生み出す加速力は、停止から100km/hまでわずか5秒。穏やかな見た目や挙動からは予想できないほどの俊足マシンという側面も持っている。

画像: SUVのように見えないのは、セダンやクーペのようなルーフラインを描くからだろう。

SUVのように見えないのは、セダンやクーペのようなルーフラインを描くからだろう。

モデルYに限った話ではないが、動力性能の高さを活かして猛ダッシュを行えば、それに見合う電力が消費される。限りある電力で走ろうと思えば、飛ばす気分はすぐに霧散する。鷹揚な動きとハンドリングも、飛ばす気にならない理由のひとつだろう。

また、先進運転支援システムであるACC(アダプティブクルーズコントロール)は、ハンドルコラムの右にあるシフトレバーを下に2回操作するだけでセットできる。数あるACCの操作の中でもトップレベルの簡単さだ。

テスラのACCはハンドルアシストを強めに効かせてくれること、そして左右の車線を含む周囲の車両位置をセンターディスプレイに表示してくれることなど、ドライバーに「システムが、ここまで見ている」ことを知らせて安心感を高めてくれる。また、ウインカーレバーを操作すると、ディスプレイにウインカー操作をした方向の斜め後方映像が映し出される。これも嬉しい機能だ。

モデルYは先進的装備を数多く搭載する一方で、インテリアデザインや機能の操作方法はシンプルで使いやすい。強力な加速力を持つ一方で、走る/曲がる/止まるの部分はオーソドックスで落ち着きある振る舞いを見せる。こうした機能性と実用性の好バランスがヒットの理由ではいだろうか。とても魅力的なモデルと言っていいだろう。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

テスラ モデルY ロングレンジAWD 主要諸元

●全長×全幅×全高:4760×1925×1625mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1980kg
●モーター:交流同期電動機×2
●最高出力:前158kW(215ps)/後220kW(299ps)
●最大トルク:前240Nm/後350Nm
●電費(WLTCモード):15.1kWh/100km
●電費(WLTCモード):6.62km/kWh
●航続可能距離(WLTCモード):605km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:255/40R20
●車両価格(税込):652万6000円

This article is a sponsored article by
''.