2024年2月14日、ステランティスN.V.はランチアの新型イプシロンをイタリアで発表した。まずは同国内で1906台の限定車とする「ランチア イプシロン リミテッドエディション カッシーナ」を販売。その後、欧州5カ国へと販売網を拡大していくという。

3モデル登場することになるランチアEVの第1弾がイプシロン

世界ラリー選手権で数々の栄光を手にし、ラリー車のベースとなったデルタ HFインテグラーレやストラトスなどが注目を集めたランチアブランドだが、近年はあまり元気がない。イタリア国内専売メーカーとしてイプシロンを販売しているのみだ。日本の新車販売市場においては2014年に販売を終了してから10年ほど休眠状態である。

しかし2021年、ステランティスN.V.はランチアをEVブランドとしてグローバル展開することを発表。2024年から隔年で1モデルずつ、合計3モデルの新型EVを発売し、2026年にはラインナップのすべてをEVにする計画だ。第1弾として新型イプシロンを発売したのち、デルタやアウレリアといった名車ブランドの復活が公言されている。

今回、新型イプシロンがEVとして発表されたわけだが、ガソリンエンジンを搭載する従来型イプシロンはイタリアで併売されるのではないかと思われる。ステランティスグループのエンジンがあるとはいえ、2026年までのわずか2年のために新型エンジン車を用意するとは思えないからだ。

画像: LANCIAロゴを配置する黒のパーツとY字の聖杯デザインは、ランチアEV 3モデルに共通するものになる。

LANCIAロゴを配置する黒のパーツとY字の聖杯デザインは、ランチアEV 3モデルに共通するものになる。

さて、今回発表された新型イプシロンはまず「ランチア イプシロン リミテッドエディション カッシーナ」という名の1906台限定車として販売される。ステランティスN.V.はランチアブランドを高級ブランドとして展開することを発表しており、この戦略のとおりイタリアの高級家具メーカー「カッシーナ(Cassina)」とのコラボレーションしたモデル、ということになる。

エクステリアデザインは、2023年に公開されたコンセプトカー「Pu+Ra HPE」にも見られるY字型のシグネチャーランプがフロントマスクで光る。これはフロントグリルの中央で縦に伸びるラインを持たせた、歴代のランチア車に見られるデザインを現代風にオマージュしたもの。聖杯をイメージしているという「Y」字の上にLANCIAのロゴが浮かんでいるようにも見える。このYはヘッドライトや丸型テールランプ、ホイールなど至るところに見られるのだが「ギリシャ文字のイプシロン」という意味もあるのだろう。

ただ、聖杯の下にある4つの長方形が意味するところまでは語られていない。デザインなのか、搭載するレベル2自動運転(アダプティブクルーズコントロール:ACC)のセンサーが埋め込まれているのだろうか。

内装のしつらえはカッシーナによるもの

ボディサイズは全長4.08m、全幅1.76mで、一般的なBセグメントハッチバックのボディ形状となる。見る角度によっては3ドアのようにも見えるが、Cピラーにドアハンドルを埋め込んだ5ドアだ。このデザイン手法は従来型イプシロンや、同じプラットフォームを採用するプジョー 208にも見られる。

SUVタイプが多いEV市場の中において全高1.44mのハッチバックタイプとしたのは、新車販売台数(2024年1月)のトップ3がフィアット パンダ/ダチア サンデロ/シトロエン C3とハッチバックで占められているイタリア市場での人気を優先した結果だろう。ちなみに第5位には登場から13年経過した従来型イプシロンがランクインしているから、その人気ぶりには驚かされる。

画像: 逆スラントしたテールランプの形状は、ランチア ストラトスをオマージュしたデザインだという。

逆スラントしたテールランプの形状は、ランチア ストラトスをオマージュしたデザインだという。

インテリア、キャビンは居心地の良いイタリアンデザインのリビングルームを彷彿とさせるもので、ボディカラーと同様のランチアブルーで統一され、シート生地は光の反射によって明暗のコントラストがきれいなベルベットを採用されている。

こうした素材選びやシートのテクスチャー「カネローニ」などのデザインはカッシーナによるもので、センターコンソールに備えられた円形のテーブル「タボリーノ」も同様だ。バイオベースのプラスチックとサドルレザーで構成され、カッシーナのロゴとシリアルナンバーがエンボス加工で記されている。このテーブルにはワイヤレス充電機能も内蔵されてスマートフォンを「置くだけ充電」することもできるようだ。

画像: センターコンソールにある円形のテーブルやベルベット生地のシートなどがリミテッドエディション カッシーナの特徴。

センターコンソールにある円形のテーブルやベルベット生地のシートなどがリミテッドエディション カッシーナの特徴。

パワートレーンは115kW(156ps)/260Nmを発生するモーターで前輪を駆動するFWDで、バッテリー容量は51kWh。航続可能距離は403kmとしている。

2024年上半期からイタリアでの販売を開始しして、ベルギーとオランダ、フランスとスペイン、そして2025年にはドイツへと販売網を拡大していくという。こうした国には「Made in Italy」やモータースポーツへの愛、そしてクルマのオンライン販売が浸透している、といった要素があるのだという。

さて日本にこうした愛はあるだろうか。クルマのオンライン販売こそ普及していないが、ランチアのような前衛的デザインを好む人が多いのも事実だ。可能性はゼロではないだろう。

【主要諸元 ランチア イプシロン リミテッドエディション カッシーナ】
ボディサイズ:全長4.08×全幅1.76×全高1.44m
車両重量:1584kg
モーター最高出力:115kW(156ps)
モーター最大トルク:260Nm
バッテリー容量:51kWh
駆動方式:FWD
電費(WLTPモード):約6.8〜7.0km/kWh
航続可能距離(WLTPモード):403km

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