挙国一致して互いのノウハウを持ち寄る中国勢は脅威
2024年1月下旬、中国で大きな動きがあった。バッテリー開発・生産大手の「CATL」「FinDreams Battery(BYD傘下)」、「CALB」、「Svolt Energy Technology」、「EVE Energy」、「Gotion High-tech」など6社と、自動車メーカーの「BYD」、「Nio」が参加する全固体電池の開発とサプライチェーンの構築を目指すコンソーシアム「中国全固体電池協同創新:Chaina All-Solid-State Battery Collaborative Innovation Platform(以下、CASIP)」の結成が発表されたのだ。
車載バッテリーの世界シェアでおよそ半数を占めるCATLとBYDを中心に世界の上位6社が参加し、さらに飛ぶ鳥を落とす勢いのBYD、そして交換式バッテリーでも知られるNioを中心に、大小さまざまな自動車メーカーも参加する。早期の全固体電池の商業化、量産化を実現し、2030年にはグローバルで競争力のあるサプライチェーンを構築することが目標だ。
そして、この巨大プロジェクトには、中国政府や大学などの研究機関が深く関係している。ストレートに言えば、国策の元に集った挙国連合である。現在、中国メーカーのEV用バッテリーは世界中で圧倒的な競争力を誇り、BYDを筆頭としたEVがやはり世界中で猛烈な勢いで増殖している。全固体電池はEVのゲームチェンジャーになると言われているが、中国は全固体電池でも圧倒的な優位に立つことを目指しているのだ。
LFPリチウムイオンバッテリーにいつまで頼れるのか
CASIP結成の背景には、現在同国が圧倒的な強みを持つ「LFPリチウムイオンバッテリー」の将来に対する危機感の表れでもある。世界首位にあるCATL、その後を追うBYD、ともに現在の主力商品はLFPバッテリーであり、これを世界中に供給している。かつて主流だったいわゆる「三元系」とくらべ比較的安価で、安全性・耐久性ともにすでに三元系を上回るレベルに進化している。
しかし、全固体電池が登場すれば、エネルギー密度、安全性・耐久性など比較にならない。まさにゲームチェンジャーであり、中国企業が築き上げたサプライチェーンは崩壊の危機にさらされてしまう。
これこそ中国が国を挙げて業界をまとめあげた最大の理由だ。すでに、CATLやBYDもそれぞれ独自の全固体電池テクノロジーの研究開発は進めていたが、それらを寄り合わせることによって、早期の実用化とサプライチェーンの構築をスピードアップさせるのが狙いだ。
翻って、トヨタ/出光興産による全固体電池の量産車への投入は早くても2027年。それも初期には、ごく一部の限られた車両への搭載に留まる見込みだ。本格的に量産がはじまるのは2030年以降だという。果たして、中国挙国連合による巻き返しはなるのか。そして受けて立つ日本、さらに欧米勢や韓国勢も巻き込んで、次世代電池を巡る熾烈な技術競争はますます激しさを増すだろう。