過去2年の「パーティ」を懐かしむも、平時のビジネスへの転換は着々と
自動車メーカーには、各国に販売ネットワークの全国組織があり、その代表者たちで作る「ディーラー評議会(カウンセル)」と密接に相談しながら販売政策を決めています。評議会のメンバーがビジネスの状況をどう見ているかは、そのブランドの現在地を知る上での手がかりになりますが、今回のNADAで、米オートモティブニュース(AN)が、米国、日本、韓国、欧州の20以上のブランドのディーラー評議会会長に行ったインタビュー記事を読むと、今の米国自動車販売のあり様が見えてきます。
その1 マージンを犠牲にした値引き販売にはおさらばしたい
昨年の米国の自動車販売は1560万台で前年比12.6%の伸び(※1)でした。これは、過去最高の2019年の1700万台にはまだ及びませんが、販売店の一致した声は、一台当たり数千ドルものインセンティブ(値引き)をつぎ込んだ乱売には戻りたくないというものです。2023年前半までは、在庫が入った瞬間に売れていくという販売店にとっては夢のような2年間がありました。値引きもほぼゼロだったため、販売店のマージン分は丸儲けになり、財務はかつてないほど好転したのです。※1:販売台数はANの発表データによる。以下も同様。
昨年後半から供給が徐々に回復するにつれて在庫も増え、値引き額も上昇しています。顧客にとっては、車種や装備、色などを選択できる状況は望ましいのですが、ディーラーにとってはバラ色の時期は終わりました。かつて理想的な在庫レベルは60日と言われましたが、今はトヨタやホンダなど人気の日本車や高級車ブランドの販売店は30日以下が望ましいと言い、それ以外の店も30〜60日の在庫が適正と見ています。販売店は「十分な利益が出てこそ従業員の維持や上質な顧客体験を提供できる」という考えです。そのためには、在庫をできるだけ早く回転させて金利負担を抑えるのが販売ビジネスの一丁目一番地なのです。
もう一つ、今回のNADA会議でテーマとして取り上げられたのが、購入可能性(Affordability)です。金利の急上昇で、かつて300〜400ドルだった月々の支払いは今や平均で700ドルになっています。販売店は、3年36カ月ゼロ金利(三菱)といった低金利ローンや、残価を高く設定したリースで支払額を抑える手法をとって対応しています。昨年362,000台(+9%)と米国販売新記録を達成したBMWは、EV販売の8割がリースだということです(米国政府のEV補助金の「米国内製造」などの条件はリース車には適用されず、外国製EVも7,500ドルの補助金の恩恵を受ける)。