アメリカでは、毎年2月にNADA(全米自動車ディーラー協会)の大会が開かれます。今年も2月初めにラスベガスで、販売店や自動車メーカー、関連企業から23,000人以上が集まって展示や商談、会議が行われました。米国の自動車販売は、コロナ禍とその後の半導体不足などによる供給制限で未曾有の売り手市場となり、ディーラーでは値引きゼロやプレミアムをつけて販売することもありました。コロナが終息し、生産と供給も回復し始めた昨年後半からは販売も「平常」に戻りつつあります。値引きとシェア争いが常態だった自動車販売業界は今回の経験を経て、高い利益率を確保しつつ顧客を満足させる持続可能なビジネスに転換することができるでしょうか。(タイトル写真はNADAホームページより)

その2 今売れるのはハイブリッド。一足飛びにEVには行けない

自動車メーカーもEVの生産調整に入りましたが、販売店でも今一番売りやすいのは、財布に優しく環境にも良いハイブリッド(HEV)やブラグインハイブリッド(PHEV)です。最高益を更新し北米市場も好調のトヨタは、先週のスーパーボールでTVCMをオンエアした中型ピックアップトラック新型「タコマ」のHEVや、ハイブリッド専用となったニューカムリを導入。ホンダもベストセラーのCR-Vの改良版や新型アコードとシビックのHEVなどが発売され今年も好調が続きそうです。

画像: 2023年のブランド別販売台数で192万台とフォード、シボレーなど2位以下を押さえて3年連続トップのトヨタの販売店(写真はトヨタUSA)。

2023年のブランド別販売台数で192万台とフォード、シボレーなど2位以下を押さえて3年連続トップのトヨタの販売店(写真はトヨタUSA)。

HEVをラインアップしないメーカーは、PHEVに力を入れます。昨年比+26%と躍進したボルボはEV転換に力を入れていますが、販売店会長は、XC60/同90/S60などのPHEVが販売を支えていると言います。三菱はアウトランダーPHEVが「ホームラン」クラスの人気です。昨年、363,000台(+23%)と好調のマツダは、今年導入するCX-90のPHEVに大きな期待をかけています。CX-50とCX-70を加えたラージシリーズがブランドバリューの向上に貢献しており、「マツダはもう業界の秘められた謎ではない(Mazda is no longer the industry’s best kept secret)」とフロリダで30年以上マツダ車を扱っている販売店協会の会長は今年40万台の新記録達成に自信を見せています。

画像: マツダCX-90は直列6気筒エンジンを搭載するラージシリーズのフラッグシップ3列SUV。PHEVモデルは4気筒エンジンと68kWのモーターを搭載し価格は49,945ドルからとプレミアムクラスとなる。

マツダCX-90は直列6気筒エンジンを搭載するラージシリーズのフラッグシップ3列SUV。PHEVモデルは4気筒エンジンと68kWのモーターを搭載し価格は49,945ドルからとプレミアムクラスとなる。

これに対し、EVへの転換を急いだブランドはやや歯切れが悪く、昨年販売台数が横ばいのメルセデス・ベンツ販売店の会長は、「EVの販売シェアは15%だったが地域差が大きい。ニューヨーク市や東部州は4駆のSUVモデルや高性能な内燃車(ICE)が人気で、今年はハイブリッドやICEに生産をシフトする判断は良い」と語っています。「EVはMSRP(メーカー希望小売価格)から大幅に値引きして売っている」と率直に認めるKIAの販売店も、PHEVやHEVを増やして調整するとしています。

ただ、EVについて期待がないわけでなく、GMシボレーの販売店会長は、「EVは新規のカスタマーを取り込める」と希望を持っていますし、VW販売店は前人気上々のID. Buzzの到着を心待ちにし、アウディはQ6 e-tronに期待をかけています。「クロストレック」、「フォレスター」、「アウトバック」が好調で昨年63万台(+14%)を販売したSUBARUも、EVのソルテラの販売を今年は倍増する計画です。

画像: SUBARUソルテラの昨年の販売は8,800台だったが、今年は倍増する計画。

SUBARUソルテラの昨年の販売は8,800台だったが、今年は倍増する計画。

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