EVの使われ方を研究してきた日産だからこそできる事業
日産自動車(以下、日産)が2024年3月1日からスタートする「ニッサンエナジーシェア」は企業や地方自治体などに向けた電気マネジメントのコンサルタント事業で、同社にとっては自動車製造・販売事業以外の新たなサービスとなる。とはいえ、事業のベースとなっているのはやはりクルマであり、2010年の発売以来世界で50万台以上を販売されたリーフや軽自動車のサクラなどといったEVだ。
日産は2018年5月、自治体・企業と協力して防災やエネルギーマネジメント、温暖化対策、観光、過疎化などといった課題を解決するためのプロジェクト「ブルー・スイッチ」をスタート。これまで西日本電信電話(NTT西日本)や広島大学、福島県浪江町や北海道美瑛町などと連携協定を結び、EVを活用した活動を行ってきた。
こうした活動を通じて培われてきた技術が、電気の効率的な利活用・・・「エネルギーマネジメント」だ。
浪江町の事例でいえば、再生可能エネルギー発電設備と公用車のリーフ、そして日産の充放電制御システムを搭載したパワーコントロールシステムを活用し、クリーンエネルギーの地産地消を促進するというものだ。そこで課題となっていたのが発電量や電力需給のバラつきで、これを解決するため導入されたのが、動く蓄電池とも言われるEVと充放電を制御するシステムというわけだ。
このエネルギーマネジメント技術を活用した新事業が「ニッサンエナジーシェア」で、ユーザーニーズに適したエネルギーマネジメントを企画、構築、保守運用までワンストップで行うサービスだ。対象となるのは「“主に”法人や事業者、自治体」としているので、条件さえ合えば個人での契約も可能なのかもしれない。
コンサルタントが提案・契約した内容に沿って、日産独自の充放電制御システムがクルマの使用予定やバッテリー残量、社屋における電力使用状況をリアルタイムに把握しながら、受給電を最適なタイミングで行うというもの。
近年、カーボンニュートラル意識の高まりで社有車をEVに切り替えた企業も多くあるが、オフィスの電力使用のピークとEVの充電が重なると、電力会社との契約電力(ピーク)を超えてしまい、これを要因に電気料金が高額になってしまうこともある。そこで、クルマの利便性を損わずに、電力のピークシフトやピークカットを図り、コストの高まりを抑えるのが本サービスだ。
太陽光パネルをはじめとする再生可能エネルギーと組み合わせることで、電力の地産地消や脱炭素化にも貢献できる。EVの使われ方を研究してきた日産ならではのエネルギーマネジメントだという。サービス開始は2024年3月1日であり、契約や申し込み方法などの詳細は今後発表されるだろう。