100kWhを超える大容量バッテリーを搭載したEVが続々と誕生している昨今、2025年には10分間の充電で100km以上の走行距離が取り戻せるのが当たり前になることが期待されている。そんな時代に対応した急速充電器「MITUS(ミタス)」が、新電元工業株式会社から発表された。発売は2025年春。本稿では日本の急速充電事情も交え、MITUS登場の背景を深堀りしてみたい。

国産急速充電器ではじめて液冷ケーブルを選択可能に

「MITUS」シリーズを開発したのは新電元工業。国内有数の充電器メーカーとして、普通充電器から急速充電器まで幅広く展開している。EVオーナーなら、どこかで利用したことがあるはずだ。同社がEVをより身近な存在とするべく開発した次世代の充電器シリーズが「MITUS」である。シリーズ第一弾として2025年春に発売予定の急速充電器「First Model」の特徴から紹介しよう。

<システム構成>
・総出力電力:360kW
・電源キャビネットと充電ディスペンサーを分離した複数台構成の充電システム(分離型)により、最大4台の同時充電が可能。
<対応充電規格>
・CHAdeMOほかNACSなどにも対応可能。
<対応充電ケーブル>
・空冷式:200A(90kW)/ブースト時は350A(150kW以上)
・液冷式:400A(180kW)
<ユーザー認証方式>
・非接触ICカードほか(ゲスト利用も可)
<充電計量方式>
・時間従量方式に加え電力従量方式も選択可能(同上)

画像: コンパクトな充電ディスペンサーにより、従来機よりも省スペースで設置できる。

コンパクトな充電ディスペンサーにより、従来機よりも省スペースで設置できる。

電源キャビネットと充電ディスペンサーを分けた分離型は、十分な充電スペースを確保できるのがメリットだ。電源キャビネットを設置するスペースは別に必要になるが、充電スペース近くに置く必要はないため、充電器設置の自由度が高まり充電ディスペンサーの口数を増やすこともできる。MITUSのFirst Modelでは、ひとつのキャビネットに対して最大4口のディスペンサーの設置と同時充電が可能である。

充電ケーブルの種類は導入する事業者が選ぶことができるが、現在主流の空冷式に対して、海外製の高出力基に多く採用されている液冷(水冷)式も用意しているのがポイント。ご存じの方も多いと思うが、空冷式は太くて重い。また、気温の影響を受けやすく、また高圧電流を通すため連続使用ではケーブルの過熱や充電器本体のトラブルを招く。

それを防ぐために、性能をフルに発揮する時間が限られている(いわゆるブーストモード)。国内の90kW基や150kW基のケーブルは空冷式がほとんどなので、最高出力を発揮できるのはせいぜい15分程度だ。「MITUS」でも空冷式ケーブル使用時は、200A(90kW)/ブースト時は350A(150kW以上)に制限される。

一方、液冷式は強制的にケーブルを冷却するため(車両の受電能力にもよるが)連続して400A/180kWの充電が可能である。つまり、180kWのまま制限がかからずに連続充電ができる。そもそも急速充電の目的が“経路充電”であることを考えれば、公共充電施設の利用上限時間30分を待たずに十分な航続距離を取り戻せるのは理にかなっているといえるだろう。

画像: 液冷式充電ケーブルの選択も可能。充電中に過熱する充電ケーブルを強制的に冷却するのでより高い電圧(400V)を通すことができる。

液冷式充電ケーブルの選択も可能。充電中に過熱する充電ケーブルを強制的に冷却するのでより高い電圧(400V)を通すことができる。

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