GPSカーナビの幕開けはユーノスコスモのCCS
楽ナビが登場するまでのGPSカーナビの歴史を振り返ると、そのページを最初に開いたのは1990年4月マツダの「ユーノス コスモ」に搭載された「CCS(カーコミュニケーションシステム)」である。そして、そのわずか2カ月後の6月には、パイオニアが「道は星に聞く」のキャッチコピーを広告に使った市販モデル初のGPSカーナビとして、カロッツェリア「AVIC-1」を発売する。ここからGPSカーナビの歴史はスタートした。
それまでのカーナビは、使う前に必ず現在地を地図上に設定する必要があり、その後はジャイロセンサーや地磁気センサーを使ってその動きを反映して使っていた。
しかし、走行中に送電線の下を通過するなど外乱の影響を受けると誤差が発生してそれがどんどん蓄積。ドライバーはその度に現在地を修正しながら使うことを強いられていたのだ。
そんな状況を一変させたのがGPSカーナビだった。そもそもGPSとは「Global Positioning System」の略で、米軍兵士が世界のどこにいても現在地がわかるよう、軍事目的で開発されたものだ。高度約2万km上空に設けられた6つの軌道上に計24個の衛星が配置され、ここから発射される、きわめて高精度な時間情報をカーナビが受信。複数の衛星から届く時間差を計算することで、現在地を計算している。
ただ、「AVIC-1」は目的地検索ができないばかりか、目的地までのルートさえ案内してくれることもなかった。そのため、正確には“カーナビ”というよりも正確な現在地を地図上に表示する“電子マップ”としての性格が強かったとも言える。
1990年からよりよい機能競争が始まった
そんな矢先、1990年後半から91年にかけて、ルートガイドを搭載したカーナビが自動車メーカーから登場するようになる。ここからルートガイドを伴った本当の意味でのカーナビの機能競争が始まることとなったのだ。
ただ、こうしたカーナビが開発されるも、新たな問題が発生する。それはせっかくのカーナビ機能をうまく使いこなせない人が少なからず存在したことだ。特にカーナビの根幹である目的地設定ではメニューのカテゴリーから絞り込んでいく作業が欠かせない。ここに多くの人が難しさを感じる人が多く、そこに使いこなせる人と使いこなせない人の“壁”が生まれてしまっていたのだ。
特により多くの人に使ってもらうことを前提とする市販カーナビメーカーにとって、この“壁”を取り払うことは避けて通れない。そんな課題に新たな発想で取り組んだのがパイオニアだった。「これを解決しなければ真のカーナビ普及にはつながらない」と感じたパイオニアは、1998年、試行錯誤の結果、音声認識機能を使ったカーナビ「楽ナビ」を誕生させたのだ。
ポイントは「タクシーに乗る時のように行き先を音声で伝えるカーナビ」にあった。難しいと感じていた目的地設定は、付属するリモコンの発話ボタンを押して目的地を告げるだけ。楽ナビは音声認識という誰にでも使いこなせるインターフェースでこの課題解決へと結びつけたのだ。スマホが普及した今でこそ、音声で目的地を探すのは当たり前となっているが、ガラケーしかないこの時代にこれを実現したのはまさに画期的なことだったと言えるだろう。
もちろん、その認識精度や検索能力は現在のスマホとは比べものにならないほど低かったのは確かだ。しかし、「カーナビを誰でも使えるようにする」との「楽ナビ」のコンセプトはこの時に確立し、それは多くの人に受け入れられて大ヒット。以来、楽ナビはそのコンセプトを継承しながら、時代に合わせた最適なモデルへと発展しつつも、その精神は今もなお連綿と受け継がれているというわけだ。