2023年9月28日、ホンダは軽自動車規格の電気自動車(EV)N-VAN e:の情報をホームページで公開した。駆動用バッテリーの容量や車両価格など公表されていないこともあるが、現時点での情報をまとめてみた。

軽自動車規格のEVを商用タイプでリリースする理由

本田技研工業の三部敏宏氏が2021年4月に代表取締役社長(現在は取締役代表執行役社長)に就任したとき、日本市場でのEV/FCV販売比率を段階的に増やし、2030年に20%、2035年に80%、2040年に100%にすることを記者会見で宣言。ここではじめて「2024年に軽自動車規格のEVを発売する」ことを公表していた。

この時点でまだ詳しい内容は判明していなかったが、その1年後の記者会見で「軽商用車のEV」であることがわかっている。日本市場においては急速充電器の数をはじめとするインフラ整備が行き届いていない現状を鑑みて、EV普及のカギとなるのは「軽商用車」だという考えだ。

画像: 2021年4月23日の記者会見でホンダの方針を熱く語った、三部敏宏 代表取締役社長(当時)。

2021年4月23日の記者会見でホンダの方針を熱く語った、三部敏宏 代表取締役社長(当時)。

大企業を中心にカーボンニュートラル実現に向けた動きは活発化しており、社用車をEVに切り替えるニーズは高まっているということ。そして物流サービスにおいて、モノが物流拠点からエンドユーザーに届くまでのラストワンマイルのほとんどは信号や交差点の多い一般道で、こうした低速走行域を走るのは、トランスミッションを持つガソリン車よりも、モーター駆動の電動車の方が適している。乗用ではなく、商用の軽EVをあえて先行して市場導入する理由にもなっているはずだ。

もうひとつのトピックは当初から予定されていた車両価格だ。ガソリンエンジンを搭載した軽自動車でさえ200万円に届くこともある昨今において、EVを100万円台に設定するというのだ。市場状況は変化しており、予定価格を公表したときから2年経過した2024年春の段階でも実現できるのだろうか。注目ポイントだ。

そして2023年9月28日、早くも軽自動車規格の商用EV「N-VAN e:」がホンダのホームページ内で公開された。

2023年10月にはN-VAN e:の実車も公開される予定

N-VAN e:は、2018年の発売以来着実な実績を積み重ねた軽商用バン「N-VAN」をベースにする。

N-VANは助手席から荷室までをフルフラットにできる大容量の後部空間であること、助手席側のセンターピラーをなくすことで車内アクセス性を高められていることなど、使い勝手の面で高い評価を獲得している。その上、リング状のデイタイムランニングライトをヘッドライトユニットに組み込むことで、N-ONEのような愛嬌ある顔立ちとするグレードも用意されるなど、デザイン面での人気もある。

画像: シートアレンジでフルフラットになる。写真はガソリンモデルのN-VANで、N-VAN e:の仕様とは異なる。

シートアレンジでフルフラットになる。写真はガソリンモデルのN-VANで、N-VAN e:の仕様とは異なる。

こうした利便性やデザイン性はEVになってもかわらないようだ。天井は高く床もフラットで、長尺物から背高物まで収納できるキャパシティを持つ一方、環境負荷ゼロに向けた取り組みとしてリサイクル素材の採用も始まる。充電ソケットをカバーする機能もある黒いフロントグリルは、使用済み自動車のバンパーをリサイクルした部材だという。拡大した写真には、リサイクルのマークやさまざまな色の粒子が見える。

駆動用バッテリーの容量や車両重量など、クルマとしての詳しいスペックはまだ公表されていないが、満充電時の航続可能距離はWLTCモードで210km以上を目標に開発されているという。また充電方式として3kW/6kWの普通充電のほかCHAdeMO急速充電にも対応するようだが、3つあるグレードの中でも「e: L4」と「e: L2」において急速充電はメーカーオプション扱いとなる。

画像: 自動車用バンパーをリサイクルで製造したフロントグリルを装着する。

自動車用バンパーをリサイクルで製造したフロントグリルを装着する。

アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムを含む先進運転支援システム、ホンダセンシングは「e: L4」と、より乗用車的な装備やデザインとする「e: FUN」に標準装備されている。ちなみに、助手席をなくした低床化グレードの「e: L2」は新車オンラインストア「Honda ON」限定タイプのようだ。

なお、2023年10月28日~11月5日に一般公開される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」でプロトタイプ車両の展示を予定しているというから、ここで新たな情報が公開されるかもしれない。

そしてひとつ、N-VAN e:のあとで登場するであろう乗用タイプの軽自動車規格EVも注目ポイントとして挙げられる。当初、2023年秋にフルモデルチェンジする最量販軽自動車「N-BOX」ベースが最有力候補かと思われていたのだが、2023年9月29日に公開された「Honda Report 2023」の中に、2025年にN-ONEベースのEVを発売することが記載されていた。

商用車とハッチバックで軽EV市場に参入することになるホンダは、ハイトワゴン系の軽EVで先手を打った日産/三菱勢とは少し違う路線で勝負をかけるようだ。いずれにしても「N-VAN e:」や「N-ONE e:(?)」がどんなモデルとして登場するのか、気は早いものの期待は膨らむ。

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