ヘルメット着用率はやや向上するも事故件数を減らすには
2023年4月1日から自転車のヘルメット着用が全国で努力義務化。その後の着用実態を全国の警察が調査した結果が、9月14日に発表された。着用率が高かったのは愛媛県「59.9%」、大分県「46.3%」、群馬県「43.8%」 がベスト3だ。
逆に着用率が低かったのは、新潟県「2.4%」、青森県「2.5%」、福島県「4.3%」など。全国平均の着用率は13.5%で、義務化以前に同様の調査を実施した一部の都府県では着用率が3倍を超えたところもあった。
調査エリアが限定的(商店街や駅前など)で、都道府県別でこんなに差が出るのだろうかとは思うが、概ね実態はこんな感じだろう。平均着用率13.5%というのは、最終目標である100%には遠く及ばないが、4月以前は4%にも満たなかったようなので、それなりの効果は出ていると言える。
しかし、増える一方の自転車が絡む交通事故の大半(66.1%)は、ルール違反が原因だ。ヘルメット着用によって重症事故の発生は低減できるが、根本的な原因であるルール違反が減らなければ、事故の発生件数増加には歯止めをかけることはできない。
そこで検討が始まったのが交通反則切符、いわゆる「青切符」の導入だ。すでに8月には有識者による第一回の検討会が開催されており、年内にあと3回を目途に開かれるとのこと。その後に提言をとりまとめ、来年の通常国会での法改正(道交法改正)を目指しているようだ。
効果が疑問視される警告カード、反則金発生する青切符に実効性期待
自転車が絡む交通事故は、2021年度は6万9694件、2022年度は6万9985件も発生している。これは2年連続の増加だ。いまや交通事故全体のおよそ2割以上を占めるほど深刻である。その60%以上が、信号無視や一時不停止など自転車側のルール違反が原因。さらに自転車乗車中の死亡事故の7割以上はルール違反に起因する。
現在の自転車取り締まりは、軽微な違反の際に交付される「自転車指導警告カード(警告カード)」と、重大な違反を犯し刑事罰の対象となる「交通切符(赤切符)」の2種類によって行われている。
しかし、「警告カード」では十分な効果が発揮できないことが指摘されてきた。2022年度だけで130万件を超える警告カードが交付され現場指導が行われたが、反則金などの“ペナルティ”はない。警察官による熱心な指導も、結果的には“お説教”に終わってしまうため、その効果が疑問視されていたのだ。
また、飲酒運転や信号無視など重大な違反には「赤切符」交付され、刑事罰の対象として検察庁に送検される。2022年度は全国で2万5000件余りが検挙されているが、ほとんどが不起訴になっているのが実情だ。
そこで、自動車とバイクに適用されている「青切符」による反則金制度を自転車にも導入して、より実効性がある制度設計に変更する。現在は警告カードと注意で済んでいた比較的軽微な違反も、これからは反則金の納付対象となる可能性が高い。
有識者検討会では、「青切符」は具体的にどの違反に適用されるのか、また対象となる違反は全年齢に適用されるのか、さらに効果的な安全教育や自転車に特化した交通ルール変更の方向性の提言などが議論されている。その具体的な内容はフタを開けてみないとわからないが、恐らく年末から年始にかけて提言の詳細が明らかにされるだろう。
自転車は車両の仲間であり歩行者ではない。スマホ片手に車道と歩道を“シームレス”に走る自転車を見るにつけ、法改正だけでなく利用者の意識改革も必要だと思われる。反則金制度の導入で事故件数が減少に転じることを期待しつつ、今後の動向を注視していきたい。