英プレミアムメーカーのジャガーが、ガソリン車4モデルの受注受付けを2023年内に終了することを発表した。2025年にはピュアEVラグジュアリーブランドとして新たなスタートを切る。また電動化の先頭を走るボルボも、2024年初頭をもってディーゼルエンジン車の生産終了を発表。内燃機関搭載車の終焉がいよいよ現実味を帯びてきた。欧州メーカーの動向を中心に、脱エンジンのロードマップ、そして日本のユーザーへの影響を再点検してみたい。(タイトル写真は2023年12月19日に受注受付を終了するジャガーXE)

HVもPHEVもNG、2035年までにEVシフトを完了する欧州

EU委員会が目論んでいた「(EU域内での)2035年までに内燃機関搭載車の新車販売を禁止」する法案は、結局、合成燃料(e-fuelなど)を使用するならば2035年以降の販売も認めることでいったん落ち着いた<2023年4月時点>。

EU域内では2035年以降に販売される“新車”は、基本的にEVかFCEVになる。純内燃機関だけでなくHV、PHEVもNGだ。例外として認められた合成燃料もその定義に曖昧さが残る。さまざまな種類がある合成燃料も、どこまで認められるかはまだ流動的だ。

2035年というゴールポストはもはや動かせないだろう。EUを離脱した英国も、基本的にはEUと歩調を揃えている。とはいえ、欧州市場はまだ波乱含みと言えなくもない。

まずは欧州各国の政策を点検してみよう。
●ドイツ:e-fuelによる例外を認めさせたが・・・・
EU原案の採決に反対した急先鋒がドイツ。結果的に、合成燃料を使用する内燃機関存続を認めることと引き換えに修正EU案に同意したが、まだまだ波乱はありそう。とは言え、ドイツのメーカーはすでにEVシフトに切り替えているのは明白。2035年にはごく一部のクルマを除き、欧州全域でゼロエミッション化を達成するだろう。

●フランス/イタリア:2035年に全面廃止する可能性も
フランス政府は2040年までにHVやPHEVを含むすべての内燃機関車の新車販売を禁止することを打ち出している。ただし、EU全体の目標設定である「2035年」案を強力に支持しており、今後はタイムリミットを2035年に前倒ししてくる可能性は高い。イタリア政府も2040年までにゼロエミッション化を達成する方針を表明しているが、フランスと同じく2035年をリミットにゴールポストを据え直すだろう。

●英国:2035年に全面廃止
英国は2030年と2035年の二段階で内燃機関車の販売禁止を計画していたが、全廃のリミットを2035年に修正することを発表したばかり。国内の長引くインフレ、依然として割高に推移するEV価格などを考慮して国民への負担を軽減する“現実的な選択”をしたという。これに対して、すでに英国国内で投資を始めている各自動車メーカーは一斉に反発しており、今後の動向には注視しておく必要がある。とはいえ、2035年にはEUと足並みを揃えることに変わりはないだろう。

欧州の自動車メーカーから内燃機関撤退宣言が加速

たとえば、ボルボは2030年にEV専業メーカーとなる計画を掲げ、すでに内燃機関の新規開発から撤退し、2024年初頭にはディーゼルエンジン車の製造を終了することを発表した。

アウディは、2026年以降に発売する新型車はすべてEVに。さらに、2033年までに各地域の顧客需要や法令に基づいてエンジン車の生産を段階的に終了する計画を発表している。

その親会社であるフォルクスワーゲンは、2035年までにガソリンエンジンを全廃することを目標に掲げている。ただし、全世界でクルマを販売するだけに、EU域外では内燃機関を残すのではないかという観測もある。

メルセデス・ベンツは2030年までに“環境が整った市場”では、すべてEVに特化した販売に切り替える。欧州を中心に、北米、中国などの巨大マーケットの状況を見ながら、徐々にEV比率を増やしていくと思われる。反面、インフラが十分ではない国や地域向けには、内燃機関も残す可能性があるということだろう。

BMWは2030年までに販売車の50%をEVとFCEVとするものの、残り50%は何らかの内燃機関を搭載することになりそうだという。

画像: 新型MINIはEVとガソリン車を英オックスフォードで混流生産されるが、同工場は2030年からEV専用工場になる。

新型MINIはEVとガソリン車を英オックスフォードで混流生産されるが、同工場は2030年からEV専用工場になる。

MINIは先日、新型MINIクーパーを発表し、英国オックスフォード工場でEVとガソリンエンジン車の生産を当面継続するとともに、英国の規制に則り2030年に同工場をEV専用とすること発表した。

ステランティスグループのプジョー、シトロエン、DS、オペル、フィアットでは内燃機関全廃の期限は区切っていないものの、2035年を待たずに段階的にEVへの置き換えが進む。今後のラインナップの主軸はEVとなり、2030年までにEVとPHEVの販売比率を欧州で70%まで引き上げる。純内燃機関車は、急激にその数を減らしていくだろう。

予想以上に進んでいるEVシフト。さらに、今後さらに厳しくなる環境規制も重なり、内燃機関への投資は急激に減っていくだろう。日本でも人気の高い欧州車だが、純内燃機関搭載車を新車で購入できなくなる日が来るのは予想以上に早いかもしれない。欧州の純内燃機関車に興味がある方は、いまから検討しておくことをお勧めする。

This article is a sponsored article by
''.