「MIH(Mobility in Harmony)」と聞いてもピンとこない方は多いだろう。実はこれ、EV開発に向けたオープンプラットフォーム・コンソーシアムなのだ。2023年8月23日の時点で72の国と地域から2688社が参加している巨大なEVアライアンスであり、世界中の英知が結集して自動車生産の歴史を塗り替えようとしている。今秋開催される「ジャパンモビリティショー2023(旧東京モーターショー)」で、いよいよその全貌が公開になる。車体メーカーが牛耳ってきた自動車生産の世界に、とてつもない衝撃を与えることは間違いない。(タイトル画像は今秋、東京で世界初公開される小型EVのイメージ)

世界有数の企業と頭脳が集結、EVだから可能になるイノベーション

MIHコンソーシアムに参加しているメンバーの顔触れは、大手自動車メーカー、自動運転関連のテック企業、ソフトウェア関連企業など。ここではあえてその名は挙げないが、だれでも知っているその世界では有数の企業が名を連ねている(「MIH Consortium」で検索すれば、参加メンバーが閲覧できる)。もちろん、その中には日本企業の名前も多数ある。

たとえば、かつてはモバイル端末でその名を馳せたカナダの「BlackBerry(ブラックベリー)」はその筆頭だ。MIHプラットフォームの基幹ソフトウェアの開発は同社が中心となって開発チームが構成されている。

ちなみに同社が手掛ける先進安全運転支援システムの基本OS (=BlackBerry QNX)は世界有数のシェアを誇っており、GMやフォード、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、ボルボ、トヨタ、ホンダほか、あらゆる国の車両メーカーが採用している。

さらにミドルウェアの開発チームには、世界の自動運転技術をリードする日本の「ティアフォー」も参画しており、自動運転技術の開発にも抜かりはない。また、車両のハードウェアとソフトウェアを総合するネットワークは「AWS(Amazon Web Service)」などが中心となって開発チームが編成されている。

ハードウェア領域は、フォックスコンと台湾の自動車メーカー「ユーロン(裕隆汽車)」によって設立された合弁会社が中心となって開発されている。

さまざまなボディタイプやサイズに対応できる柔軟なモジュラー構造を採用し、搭載バッテリー、ホイールベースやサスペンション形式に至るまでニーズに応じてカスタマイズが可能だという。その生産にはギガキャストによる一体型アルミ鋳造技術の採用も予定されている。

EVの時代が到来したからこそ発想されたのが「MIHコンソーシアム」。PCのように各デバイスメーカーが供給するパーツを組み上げて、完成させたものを自社の車両として販売する時代がやってくるのだ。

革新的なコンセプトと技術、衝撃の全貌はJMSで

この動きを既存の自動車メーカーはどのように迎え撃つのだろうか。“そんなPCみたいな乗り物はクルマじゃない!”という声も聞こえてきそうだ。たとえばトヨタは“クルマ屋のつくるBEV”を標榜して、いままで築いてきた自動車作りのノウハウを活かしたEVで、MIHのようなまったく新しい業態を迎え撃つ。

いずれにせよ、その真価を見定めるのは、2023年10月26日から開催される「ジャパンモビリティショー2023(JAPAN MOBILITY SHOW 2023)」においてということになるだろう。

画像: MIHによる初めての量産型EVは1列3人乗りの小型車。「ジャパンモビリティショー2023」で実車を世界初公開、2024年に量産を開始。今後数年以内に6シートおよび9シートの車両プラットフォームも発表する予定だ。

MIHによる初めての量産型EVは1列3人乗りの小型車。「ジャパンモビリティショー2023」で実車を世界初公開、2024年に量産を開始。今後数年以内に6シートおよび9シートの車両プラットフォームも発表する予定だ。

そこでは、間もなく量産が開始されるサンプルEV(MIHプラットフォームを使用した初めての実車であり、今後、世界各のMIHメンバーの会社から登場するEVのサンプル的な役割を兼ねる)を世界初公開するだけでなく、MIHが目指すスマートシティ構想「MIH Smart Transportation Platform」も明らかにされるという。

世界最大の企業コンソーシアムであり、緩やかな巨大アライアンスでもある「MIH」。果たして、自動車業界に革命を起こすことはできるのか。その全貌が明らかになる10月26日を楽しみに待ちたい。

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