EVの動力源となる電力を貯めるバッテリー、その容量を表す単位は「kWh」が使われる。一方、家電や鉛バッテリーでは「Ah」という表記が見られる。このふたつの単位はどこが違うのか。バッテリーのスペックを正しく理解するために、簡単に説明しておこう。(タイトル写真はEV用リチウムイオン・バッテリーバック・モジュール)

「kWh」は電力量、数値が大きいほどEVの航続距離は伸びる

バッテリーの容量を示す単位として「kWh」と「Ah」の2つが使われている。主にEVのリチウムイオンバッテリーには「kWh」、12Vの鉛電池は「Ah」だ。このふたつには、どのような違いがあるのだろうか。

まず「kWh」について説明しよう。「kWh」の読み方は「キロ・ワット・アワー」となる。このうち「k(キロ)」は1000の単位を示す。そして「W(ワット)」は電力のこと。電流が行う仕事量を指す。そして「h(アワー)」は1時間あたりということ。

つまり、「kWh(キロ・ワット・アワー)」は、1時間当たりに、電気が行う仕事の量であり、かつ、Wh(ワット・アワー)の1000倍の単位を意味する。電気の仕事量である「W」は、電流(単位は「A」)と電圧(単位は「V」)の積算で求められる。つまり「W=A×V」だ。

具体例で言えば、自宅でドライヤーを1時間30分使ったときの電力量は、以下の式になる。ドライヤーが1500W(100V×15A)。1時間30分は1.5時間(h)だ。1500W(100V×15A)×1.5h=2250Wh=2.25kWh

電力量(kWh)の数値が大きいバッテリーほど、大きな仕事ができることを意味する。いわゆる「容量の大きなバッテリー」となるのだ。

「Ah」は電圧が同じもの同士の性能比較に役立つ

一方、「Ah(アンペア・アワー)」の「A」は電流で、「h」は1時間あたりを意味する。つまり、1時間あたりの電流の量を意味する。「Ah(アンペア・アワー)」が大きいバッテリーほど、大きな電流を流せるということになる。しかし、ここで注目してほしいのは、「Ah(アンペア・アワー)」には電圧(V)が含まれていないことだ。実際に電気に仕事をさせる量(電力量=W)を考えたい場合は、要素が足りない。

画像: 「Ah」表示が使われる車載の12V鉛バッテリー。

「Ah」表示が使われる車載の12V鉛バッテリー。

しかし、実際に「Ah(アンペア・アワー)」を使うのは、12Vの鉛バッテリーだ。この場合、どの製品も基本的にクルマのバッテリーは12Vで統一されている。その電圧が統一されている条件下であれば、「Ah(アンペア・アワー)」同士で、バッテリーの性能を比較することができるのだ。

ちなみに30Ahの12V鉛バッテリーの場合、その電力量は360Wh(0.36kWh)だ。数十kWhが当然というEVのリチウムイオンバッテリーと比べると、鉛バッテリーの電力量は、まさにケタ違いの差となる。

つまり、「kWh」も「Ah」もどちらもバッテリーの容量を比較することのできる単位だ。しかし、従来の鉛バッテリーで使われていた「Ah」は、電圧が考慮されていないため、前提条件として電圧が同じときにだけ比較に使える。一方、「kWh」は、電流と電圧の両方を含めた上でのバッテリーの容量を比較できる単位というわけだ。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

画像: 「Ah」は電圧が同じもの同士の性能比較に役立つ

This article is a sponsored article by
''.