特定小型原付の電動キックボード(以下、電動キックボード)が登場して1カ月余。良くも悪くも注目を集めているが、実はそれに先立つ今年4月1日に新しい区分の乗り物「移動用小型車」が登場していたことはあまり話題になっていない。移動用小型車は「立ち乗り・座り乗りで区別しない」という定義があるので、立ち乗りタイプは一見すると特定小型原付の電動キックボードと区別がつきにくいが別物だ。移動用小型車の特徴を解説する。(タイトル写真はトヨタC+walkTの標識ステッカー)

歩く速度に的を絞ったパーソナルモビリティ

「移動用小型自動車」は、2023年4月1日から施行された改正道路交通法によって新設されたひとり乗りのパーソナルモビリティ。いわゆる自動運転レベル4に該当する「遠隔操作型小型車」も同時に新設されたので、世間の耳目はそちらに集まってしまった感がある。本稿ではあくまでパーソナルモビリティとしての「移動用小型車」、そして電動キックボードとの違いを解説していく。

「移動用小型車」の車両要件は、以下のように定められている。
●車体寸法は、全長120cm以下×全幅70cm以下、高さ120cm以下(ヘッドサポートを除いた部分の高さ)
●電動車であること(原動機は電動モーターに限定)
●最高速度は6km/h以下
●歩行者に危害を及ぼす鋭利な突起がないこと
●移動用小型車であることを証明する標識(シール)を貼付していること ※タイトル写真参照
●座り乗り、立ち乗りを問わない
●走行できるのは歩道および路側帯。歩車道の区分がない道路では右側通行

つまり、基本的には電動クルマ椅子に準じており、道交法上では「歩行者」として扱われるのだ。最高速は歩行者の速足程度となる6km/hを上限としており、歩車道の区分があるところでは歩道と路側帯のみ通行可。車道は走れない。さらに特徴は下記の通りとなる。
●年齢制限なし
●免許証不要
●ヘルメットの着用義務なし
●ナンバープレート不要
●自賠責保険への加入不要

と、こちらも電動クルマ椅子とほぼ同じだ。「立ち乗り、座り乗りを問わない」とあるところから、立ち乗りタイプの場合は詳しい人でなければ、電動キックボードとの区別がつきにくい。しかし、文字どおり両車は似て非なる乗り物なのだ。最大の違いは、「移動用小型車」はあくまで“歩行者”であり、電動キックボードは“特定小型原動機付自転車”で車両の仲間であるという点だ。

画像: トヨタから発売されている立ち乗りタイプの移動用小型車「C+walk T」。電動キックボード風だがよく見ると3輪で最高速は6km/h以下。車道は走れない。

トヨタから発売されている立ち乗りタイプの移動用小型車「C+walk T」。電動キックボード風だがよく見ると3輪で最高速は6km/h以下。車道は走れない。

「移動用小型車」は歩道と路側帯しか走行できないが、電動キックボードは特例特定小型原動機付自転車として『自転車通行可の補助標識がある歩道のみ、6km/h以下の走行モードに切り替えたうえ緑色の最高速度表示灯を点滅しながら歩道の中央から車道寄りの部分、または特例特定小型原動機付自転車・普通自転車の歩道通行部分を徐行して通行できる』とされている。

これを曲解して、電動キックボードは歩道走行モードならば「移動用小型車」扱いになるのですべての歩道が通行可能になるという誤情報が流れたことがあったが、電動キックボードはあくまで車両の仲間だ。「特定小型原付」の縛りから逃れることはできない。

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