「BYD ATTO(アット) 3」の令和4年度補正予算によるCEV補助金は上限85万円だった。しかし令和5年度分から上限65万円に減額。外部給電機能を搭載していながら、上限65万円になってしまったのだが、7月12日以降の登録車は再び上限85万円に戻った。3カ月で20万円の差が生まれる原因となったのが「型式指定認証」そして「PHP」という耳慣れない言葉だ。

「型式指定」を受けていない輸入車、実は少なくない?

そもそも日本では「型式認証制度」というものが存在している。これは製造事業者(自動車メーカー)や輸入販売元が、あらかじめ国土交通大臣に申請または届け出を行って、その自動車の保安基準や環境性能を始めとするさまざまな国内基準への適合性について審査を受ける制度だ。国産車、輸入車を問わず、日本国内の公道を走るすべての自動車はこの「型式認証」が必要だ。

そして、この型式認証を受けるには2つの方法がある。「型式指定制度(TDS)」と「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」だ。

■型式指定制度(TDS)
「型式指定制度」というのは、型式認証を得る際にサンプル車の審査ならびに量産によって均一な性能が保持されていると認められる場合に適用される制度であり、審査を通過した自動車が“型式指定自動車”となる。

大半の国産車はこれに当てはまるので、新車登録や継続車検も書類の提出だけで現車の審査は省略される。年間販売台数が多い輸入車(5000台以上)も同様だ。

簡単に言えば、当該車両が各種の基準を満たしていることを書類によって証明できる制度であり、新車登録時に車検や排出ガス試験を受けたりする必要がないのはこの制度のおかげである。

<型式指定の流れ>
申請(自動車メーカー・インポーター)→提出書類による日本国内基準への適合性確認審査→車両による審査→品質管理体制審査→型式の指定→メーカー(インポーター)が1台ごとに完成検査を実施→新規検査(車両提示不要)→登録

■輸入自動車特別取扱制度(PHP)
一方、輸入車の多くが利用しているのが「輸入自動車特別取扱制度(PHP:Preferential Handling Procedure )」である。協定を結んでいる国々が生産する自動車に対し、年間販売予定台数5000台(同一車種)を上限に申請を簡略化する制度だ。

現地の審査機関によって実施された安全性や環境性能などをクリアする書類の適合性を国内で審査し、その結果を1台ごとに行う新規検査において活用する。提出書類が大幅に簡素化され、結果として、型式認証にかかるコストや時間は大幅に圧縮される。

とは言え、新規登録において現車の確認が必要なところは、書類審査だけで済む「型式自動車」と比べると不便なことは否めない。しかも年間販売台数に上限が設けられている。

<輸入自動車特別取扱制度(PHP)の流れ>
届出(インポーターなど)→提出書類による日本国内基準への適合性確認審査→(車両による審査なし)→(品質管理体制審査なし)→排出ガスについて50台ごとに抜き取り検査実施→新規検査(車両提示が必要)→登録

以上のようにPHPを利用して型式認証を得ても“型式指定自動車”には該当しないというのがCEV補助金の解釈だ。BYDの輸入元であるBYDジャパンは、PHP利用はあくまで暫定的措置としてかねてより型式指定の申請を行ってきたが、2023年6月28日付で国土交通省より中国ブランド車として初めて「型式指定認証」を取得、晴れて『型式指定自動車』として認められた。これを受けてCEV補助金も7月12日以降の登録車が上限85万円の補助対象車に返り咲いた、というのが事の経緯である。

画像: 2023年末の国内発売を予定する「BYD SEAL(シール)」。前後にモーターを搭載する4輪駆動の上級ハイパフォーマンスセダンで航続距離は555km。

2023年末の国内発売を予定する「BYD SEAL(シール)」。前後にモーターを搭載する4輪駆動の上級ハイパフォーマンスセダンで航続距離は555km。

ATTO 3の型式指定認証の取得により、国産EVやすでに認証を取得している輸入EVと条件面では変わらない基盤が整った。8月にはハッチバックEVの「ドルフィン」、年末までには上級EVセダンの「SEAL(シール)」も発売を予定しているBYD。2023年も後半に差し掛かり、国内EV市場はさらに活気づいていくだろう。

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