梅雨が明ければ夏休み。マスクのない久々のお休みを楽しみにしている方も多いだろう。目的地の最寄り駅までは電車で行って、現地ではバスや超小型モビリティに乗ってスマートに移動。そんな新しい旅のサポートをしてくれるのが「観光型MaaS」。マイカーで行く時とは違った新たな発見があるかもしれない。(タイトル写真は「会津Samurai Maas」アプリ)

「観光型MaaS」はすでに使ったことがあるかも?

ところで「観光型MaaS」という言葉はご存じだろうか。MaaS(Mobility as a Service)と言うと、何やら仰々しいものを想像してしまうが、実証実験を終えて、すでに実用化されているサービスがかなりある。

観光型MaaS(「観光地型MaaS」と呼ぶことも)は、鉄道やバスなどの公共交通機関をコアに、地元自治体や観光事業者、さらにレンタカーやシェアリングサービス事業者なども巻き込んで、移動をシームレスにつなげたワンストップサービス事業の総称だとイメージすればわかりやすい。

たとえば、以前からあった、鉄道会社の終日乗り放題切符と地元飲食店などとタイアップした食べ放題チケットなどに加え、いわゆる駅前レンタカー、観光タクシーなど、それぞれを何らかの形で紐づけて提供するのが観光型MaaSの典型だ。

現地で利用する、バス、タクシー、レンタカーやシェアサイクルなどは二次交通と呼ばれることもある。スマートフォンとアプリの普及が進んだ現在は、その連携範囲が大きく広がり利便性が劇的に向上している。これが観光型MaaSとして注目を浴びて、いまや観光地における社会課題解決の糸口になるのではと期待されている。

コアになるのはスマホアプリ

MaaSは電子決済が前提なので、そのプラットフォームとなる「アプリ」が欠かせない。観光型MaaSも同様で、電子決算が主流だ。アプリの開発も盛んで、鉄道会社を中心にさまざまな業界から参入している。

最近では自治体が独自に開発して地元の宿泊施設やモビリティとの連携を図る例も出てきた。鉄道会社が運営するものは従来からある経路検索に加え、鉄道のチケット予約、現地の施設(飲食や土産物の購入なども含む)をキャッシュレスで利用できる電子チケット、さらに二次交通の予約やキャッシュレスの支払いなど、多種多様なバリエーションがあり、また全国各地で実証実験が行われている。その中から、いくつか目についたものをピックアップしてみた。

●「TOHOKU MaaS」:JR東日本が東北6県で展開。旅行のプランニングから、現地で使える電子チケット、乗りたい時間に行きたい場所に行けるオンデマンド交通の利用など、すべてスマホアプリで決済できる。

画像: 旅のプランニングから交通チケット、飲食チケット、アクティビティの利用料まですべてスマホ1台で完結。

旅のプランニングから交通チケット、飲食チケット、アクティビティの利用料まですべてスマホ1台で完結。

●「Emot」:小田急電鉄を中心に、グループの電車・バスの利用に加え、配車サービス「Japan Taxi」や「MOV」、さらに航空機(JAL)やドコモのバイクシェアなど、さまざまな業種と連携している。「デジタル箱根フリーパス」と「箱根ナビ」で、さまざまなデジタルチケットの購入が可能だ。

画像: 小田急線のチケットはもちろん、箱根観光ののアクティビティ利用料も電子化されている。

小田急線のチケットはもちろん、箱根観光ののアクティビティ利用料も電子化されている。

●「COCOON Pj.」:京浜急行電鉄が運営するMaaSサイト。ブラウザ経由なのでアプリのようにダウンロードする必要がなく、思い立った時に利用できる。京浜急行沿線を5つのエリア(東京大田区、川崎、横浜、横浜金沢区、三浦半島)に分割し、それぞれの区域の特性に合わせて、予約機能、オンライン決済、デジタル機能、マルチモーダル経路検索機能などが利用できる。たとえば、三浦半島エリアでは、モビリティの整備を目標のひとつに掲げている。

●「関西MaaSアプリ」(仮称/2023年夏リリース予定):関西鉄道会社7社共同(Osaka Metro、近鉄、京阪、南海、JR西日本、阪急、阪神)→2025年開催の大阪万博を視野に入れた関西方面をシームレスに移動できる関西エリアの交通統合アプリ。

●「STLOCAL」:ゼンリンが提供するMaaSアプリ。現在は長崎市/佐世保・西九州/五島列島が対象エリア(2023年7月現在)。対象エリアでは、公共交通、観光施設、体験アクティビティなど電子チケットが使える。

●「会津Samurai MaaS」:地方自治体の先進的な取り組みとして紹介されることも多い。鉄道を始め、バスなどの公共交通機関、タクシーなど、人気観光エリアで使えるデジタルチケットを販売するほか、使えば使うほどお得になるサービスが次々に登場している。

ここで紹介した観光型MaaSアプリは、本当にごくごく一部。主要鉄道路線だけではなく、ローカル線やバスなど地元密着型の公共交通事業者、さらに観光事業者やアプリの開発やサービスを行うスタートアップまで、盛り上がりが加速している。MaaSなんてまだ先のこと、と高を括っていたら実はもうかなりの人が利用しているのだ。

現在、日本のMaaSは5段階レベル(※)でようやくレベル2までたどり着いたと言われている。次の段階に進むには、関連業界の連携をさらに深めると同時に、決済や個人情報の管理など関係省庁の垣根を取り払うことが不可欠だが、これも近いうちに進展がありそうだ。マイカーのいらない生活は、実はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。

※参考
MaaS社会実現までには、5つの段階があると考えられている。
レベル0:統合されていない単体のサービス(統合なしの単体サービス)
レベル1:複数交通モードの情報検索が可能(複数交通モードの情報検索が可能)
レベル2:ひとつのサービス上で複数交通モード検索・予約・決済に対応(予約・決済の統合)
レベル3:複数交通モードのサブスクリプションサービス(サービス提供の統合)
レベル4:レベル3の内容を国や都市計画の政策として行う(政策の統合)

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