PHEV(プラグインハイブリッド)とMHV(マイルドハイブリッド)では、どちらがお得なのか? そんな疑問に答える、よい題材となるのがマツダのSUVである「CX-60」だ。装備を同じくするPHEV(プラグインハイブリッド)とMHV(マイルドハイブリッド)をラインナップする。その2台のお得度を購入時、維持費などから検討してみた。

燃料費はどれだけ違うのだろうか?

燃料費は、どれだけ必要になるのか? 計算が簡単なのは、すべて軽油だけで走るMHVの「XD-HYBRID Exclusive Sport 4WD」だ。年間1万kmを走行、軽油価格を150円/Lと仮定して計算してみよう。「XD-HYBRID Exclusive Sport 4WD」の燃費性能は、21km/L(WLTCモード)。これで1万kmを走るには約476Lの燃料が必要だ。その価格は7万1400円となる。

画像: XD-HYBRIDに搭載されるディーゼルターボエンジン。21km/Lという低燃費を実現している。

XD-HYBRIDに搭載されるディーゼルターボエンジン。21km/Lという低燃費を実現している。

一方、PHEVの計算は一筋縄ではいかない。満充電にすれば、78kmまで燃料をまったく使わずに走れてしまう。1回当たりの走行が78km未満であれば、年間1万kmでも、すべて電気だけで走れてしまうのだ。逆に、充電をまったく行わずに、エンジンだけで走ることもできるのだ。そこで、電気だけ、エンジンだけで計算し、その間を目安としてみたい。

「PHEV Exclusive Sport 4WD」の電費性能は、247Wh/km(WLTCモード)だ。これは1km走るのに247Wh(=0.247kWh)の電力が使われることを意味する。この性能で1年1万kmを走行すると、使う電力は2470kWhとなる。自宅で充電する電気料金は、契約によって異なるが、目安として1kWh=25円で計算すると、2470kWhは6万1750円となる。

では、「PHEV Exclusive Sport 4WD」をエンジンだけで走らせるとどうなるのか。その燃費性能は14.6km/L(WLTCモード)だ。これで約1年1万kmを走ると約685Lのガソリンを消費する。1L=170円で計算すると11万6450円。

すると「PHEV Exclusive Sport 4WD」の燃料費は、6万1750円〜11万6450円。一方、MHVの「XD-HYBRID Exclusive Sport 4WD」は7万1400円となる。これを比べると、電気だけで走ればPHEVの方がお得だが、エンジンを使うほどにMHVがお得になる。状況によって勝敗が分かれるということで、燃料費のお得度はドローと言える。

価格には出ない走りの差は?

では、価格に表れない、走りの差はどうか? 「PHEV Exclusive Sport 4WD」は、188psの2.5Lのガソリン直4エンジンと175psのモーターをあわせることで、システム最高出力323psを生み出す。車両重量は2060kgとヘビー級となるけれど、ミッドサイズのSUVとしては非常にパワフルで俊敏な走りが楽しめる。

また、最大78kmまではEV走行も可能だ。静かでスムーズなEV走行と、パンチの効いたエンジンでの走行。この2つを楽しめるのが「PHEV Exclusive Sport 4WD」の魅力となる、

画像: 最大78kmまでEV走行ができるPHEV。旅行などでもない限り、ほとんどガソリンは使わないで済みそうだ。

最大78kmまでEV走行ができるPHEV。旅行などでもない限り、ほとんどガソリンは使わないで済みそうだ。

一方、「XD-HYBRID Exclusive Sport 4WD」の魅力は、ディーゼルとはいえ直6エンジンならではのフィーリングの良さだ。また、254ps/550Nmのエンジンに、16.3ps/153Nmのモーターがアシストする。

最高出力はPHEVに及ばないけれど、600Nmを超える大トルクはPHEVに勝るもの。しかも、こちらは車両重量1910kgと150kgも軽いのだ。フィーリングの良さと、トルクの力強さがあるため、ゆったりと走るのであれば、MHVの方が気持ち良いことは間違いないだろう。

新車での価格差は34万円ほどMHVの方がお得で、燃料費はドロー。走りはどちらも別の魅力があって、やはりドロー。結果で言えば、新車価格の分だけMHVの方がお得となる。ただし、東京都などで、さらなる補助金が得られればPHEVの方がお得となる。マツダのPHEVとMHVのお得度の差は、ごくごくわずか。実力伯仲の2台と言えるだろう。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

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