設置のハードルが高い集合住宅の充電設備
EV/PHEV普及にいまひとつ弾みがつかない原因と言われているのが、都市部に集中しているマンションなど集合住宅の問題。自治体によっては設備導入に補助金を交付したりしているものの、遅々として進んでいないのが実情だ。
充電器を設置するには管理組合員(住民)の過半数以上の承認が必要だが、それ以前に初期の導入費用や運営管理の問題などで暗礁に乗り上げてしまうことも多い。
さらに、機械式駐車場が多いため、対応する充電器の機種が少なく平地に設置するよりもさらにハードルは上がってしまいがちだ。
「2050年CO2排出実質ゼロ」を目指す東京都は、2030年度までに新車販売される乗用車を100%非ガソリン化することを目指して、さまざまな施策を全国の自治体に先駆けて実施してきた。
集合住宅関連への助成が充実
令和5年度もそれらの施策をさらに加速させるため、集合住宅、戸建住宅への充電設備導入の経費に関する助成事業を実施。6月30日から受け付けを開始する。
令和5年度の助成事業のなかでも目を惹くのが、集合住宅関連への助成にさらに力が入れられたところだ。
(1)集合住宅の機械式駐車場へ設置する際の工事費に対する補助上限額が引き上げ。
(2)集合住宅への充電設備の導入調査に係る経費の補助<新設>
(3)集合住宅への充電設備設置後の電気料金(基本料金)に対する補助<新設>
(2)と(3)は全国の自治体では初めての試みである。導入段階から実際の運営まで丸ごと面倒を見ましょう、というわけだ。
他にも集合住宅関連では従来から行われている助成事業がさらに強化されている。以下にそんな羨ましい(?)助成事業から、集合住宅および普通充電設備導入に関連する項目を抜粋して紹介しよう。
●「集合住宅に設置する充電設備導入」に関する主な補助
<設備購入費>
・普通充電設備(V2H含む):2分の1
※機種ごとに上限あり。また経済産業省が承認した機種に限る。
<設置工事費>
・普通充電設備(V2H含む):10分の10
※国の補助金併用の場合はその分を差し引く。
コンセント:上限60万円/基(1基目)、2基目以降は30万円/基
コンセント以外:上限81万円/基(1基目)、2基目以降40万円/基
機械式駐車場に設置する場合は、上限171万円(1基目)、2基目以降は上限86万円/基
<受変電設備改修費>
合計出力50kWh以上の充電設備導入時:10分の10(上限435万円)
※国の補助金併用の場合はその分を差し引く。
<太陽光発電システムおよび蓄電池>
V2Hと同時に申請する場合の購入費・工事費:10分の10。
※JFTまたはそれに準じる認証を受けたものに限る。
太陽電池モジュール:上限30万円/kW、蓄電池:上限20万円/kWh。
拡充:既存住宅の陸屋根への太陽光発電システムの架台装置に伴って防水工事を行う場合は18万円/kW上乗せ。全体で上限1500万円。
潤沢な財源を持つ東京都ならではか
●新設「集合住宅への充電設備設置導入調査に係る経費」に関する補助
現地調査費および提案書作成にかかわる経費:上限18万円/件
※集合住宅の居住者の用に供する駐車場への充電設備設置にかかわる導入調査等を行うこと。都の登録を受けた充電サービス事業者が調査を行うこと。
●新設「集合住宅への充電設備設置後のランニング経費」に関する補助
上限18万円/年(最大3年間) 特別措置等を利用して新たに契約した電気料金の基本料金
※充電設備を設置するために特別措置等の電力契約を新たに行うこと。
※充電設備を10基以上設置すること(当該集合住宅の駐車場区画が10区画未満の場合は全駐車場区画に設置すること)。
※上述の導入調査等にかかわる経費補助を利用していること。
以上が、集合住宅に関係する東京都の令和5年度助成の概要だ。もちろん、戸建て住宅や都内区市町村(公共用)への助成も継続して行われるが、なんといっても集合住宅への助成がきめ細かく設定されたのが目を惹く。裏を返せば、最先端をいく東京都でも、集合住宅問題には悩まされているということだろうか。
最近では、充電設備の有無がマンションの資産価値にも大いに影響してきているという。ゆえに分譲時から充電器が設置されている物件も増えてはいるが、未導入物件、なかでもすでに築年数が経っている分譲マンションではほとんど進んでいないのが実情だ。これを機に充電器の設置を進めて、EV/PHEVのさらなる普及を目指すところも多いだろう。
潤沢な財源がある東京都ならではの施策ともいえるが、集合住宅が多い大都市の自治体でも、こうした取り組みが広がることに期待したい。