この春(2023年3月15日)より、トヨタの「プリウス」に、プラグインハイブリッド版である「プリウス(PHEV)」が追加された。そこで、1月から発売されている通常のハイブリッド(HEV)とプラグインハイブリッドでは、どちらがお得になるのかを比較してみた。(タイトル写真は右がPHEV、左がHEV)

車両価格に補助金を加味すると購入時はどうなる

「プリウス」に追加されたプラグインハイブリッドの「プリウス(PHEV)」。その車両価格は460万円。グレードは「Z」のみで、駆動方式はFFとなる。それに対して通常のハイブリッドの「プリウス」の「Z」グレード、FF仕様の価格は370万円。単純比較をすると、車両価格は通ハイブリッドに対して、プラグインハイブリッドは90万円も高いことになる。

しかし、プラグインハイブリッドには国の補助金が用意されている。令和4年度補正予算「グリーンエネルギー自動車導入促進補助金」が55万円。これでハイブリッドとの価格差は35万円にまで圧縮される。

また、新車購入時にかかる重量税も通常3万円のところ、プラグインハイブリッドでは免除されて0円。しかし、重量税は通常ハイブリッドも2万2500円減免されるため、ここでの差は7500円。つまり新車購入時の価格差は34万2500円だ。

画像: PHEVは自宅の駐車場で充電できるようにするのが一般的。

PHEVは自宅の駐車場で充電できるようにするのが一般的。

そして、プラグインハイブリッドのありがたみを存分に受け取るには、自宅駐車場の充電設備の敷設が必須となる。この敷設費には10万円ほどの費用がかかる。

つまり、車両価格での差は90万円だけプラグインハイブリッドが高いけれど、補助金、税制優遇によって価格差は34万2500円にまで圧縮される。ただし、自宅駐車場に充電設備のない場合は、敷設の10万円分だけプラスになって、トータルでは44万2500円の差となるわけだ。

税金と燃料代、ランニングコストを比較すると

ランニングコストの差はどうだろうか。具体的には毎年の自動車税種別割と燃料費の差だ。

税金となる自動車税種別割は、プラグインハイブリッドだけに「グリーン化特例」が用意されている。通常のハイブリッドは3万6000円のところ、プラグインハイブリッドは9000円。つまり、毎年、2万7000円もプラグインハイブリッドはお得になる。

一方、燃料費はどうであろうか。ハイブリッドの燃費は28.6km/L(19インチタイヤ装着車/WLTCモード)となる。1リッターのガソリン価格を160円とすれば、160円で28.6kmを走れる。1km走るのには約5.9円だ。

画像: ハイブリッドの燃費は28.6km/L。

ハイブリッドの燃費は28.6km/L。

もう一方のプラグインハイブリッドの燃費性能は、26.0km/L(19インチタイヤ装着車/WLTCモード)。バッテリーなどで車両重量が150kgも通常ハイブリッド版よりも重いのが燃費悪化の理由だろう。

この場合は、ガソリン1リッター160円で26kmを走り、1km走るのには約6.2円かかる。ガソリンだけで走っている場合、プラグインハイブリッドは1km走るたびに約0.3円余計にお金がかかる。1年で走行5000kmであれば、その差は1500円、1万km走行であれば3000円となる。

では、プラグインハイブリッドが電気のみで走り続けるとどうなるのか。プラグインハイブリッドの電費は、7.46km/kWhだ。これは1kWhの電力で7.46kmを走ることを意味する。

電気料金は、住んでいる地域や契約内容によって異なる。現在では1kWhあたり20〜30円といったところ。中間をとって1kWhあたり25円で試算してみたい。そうなると、プリウスプラグインハイブリッドは25円で7.46kmを走ることができる。

画像: PHEVのEV走行可能距離は19インチタイヤ装着車で87km。日々、この距離を超えなければガソリンは不要ということになる。

PHEVのEV走行可能距離は19インチタイヤ装着車で87km。日々、この距離を超えなければガソリンは不要ということになる。

1kmあたりにすると、約3.4円だ。つまり、電気だけで走っていれば、1kmごと約6.2円のハイブリッド版よりも、2.8円も安い。年間に5000kmを走るのであれば、その差は1万4000円。1万kmを走るのであれば2万8000円もの差となる。

つまり、ガソリンで走るとハイブリッドの方がお得で、電気で走るとプラグインハイブリッドの方がお得。ただし、その差は均等ではなく、ガソリン代の差は小さく、電気の方が大きいとなる。ガソリンだけで走ったとしても年間1万km走行で、わずか3000円ブラグインハイブリッドが高いだけだ。燃料費はEV走行時を含めれば、プラグインハイブリッドの方が安いと考えていいだろう。

トータルで考えると、どうなるか

購入時の支払いを考えると、プラグインハイブリッドの方が44万2500円も高い。しかし、購入後は、毎年、自動車税種別割の優遇の差額2万7000円だけプラグインハイブリッドがお得になる。それが10年間であれば、税金だけで27万円も安くなる。また、燃料費もプラグインハイブリッドの方が安い。頑張って、電気だけで走るようにすれば、1万円以上も燃料費を安くすることができるはずだ。

しかし、最初の価格差である44万2500円を優遇税制と燃料費だけで挽回することは、正直、かなりつらい。10年間で税金分が27万円、さらに燃料費で10万円ほど挽回できれば御の字だ。

また、プラグインハイブリッドの優遇税制が、今後10年間も継続されるかどうかは不透明。もしも、優遇打ち切りになると、最初の価格差を挽回するのは、相当に難しいと言っていいだろう。

ただし、クルマは手離すときに下取り価格が戻ってくる。その下取り価格はあくまで水物なので、断定はできないが、通常ハイブリッドよりもプラグインハイブリッドの方が高いことが予想できる。どれだけの差になるのかは不明だが、その差だけ、購入時の価格差が縮まることになる。

ということで価格だけを見れば、トータルではプラインハイブリッドよりもハイブリッドの方がお得と言えるだろう。

さらに走りの魅力を加味すると……

しかし、忘れてはいけない部分もある。それがプラグインハイブリッドには走りという魅力があることだ。ハイブリッドの144kW(196ps)でEV走行は数km程度に対して、プラグインハイブリッドはシステム最高出力164kW(223ps)、EV走行距離87km(19インチタイヤ装着車/WLTCモード)となる。

画像: 走行性能はPHEVの方が上だ。そこをどう考えるかが選択のポイントになるだろう。

走行性能はPHEVの方が上だ。そこをどう考えるかが選択のポイントになるだろう。

走行性能という点では、プラグインハイブリッドの方が確実に格上なのだ。その性能を購入時の44万2500円の差で手に入れることができる。しかも、走るほどに価格差は縮まり、最後の下取り次第では、ゼロにすることも可能ではない。そうとなれば、購入時の価格差はそれほど大きなものではないだろう。

とはいえ、プラグインハイブリッドは最初にも述べたように、駐車場での充電が必須。充電設備付き駐車場が用意できないのであれば、プラグインハイブリッドは正直、宝の持ち腐れになる。それさえクリアできるのであれば、個人的にはプラグインハイブリッドは、ハイブリッドに対しても魅力度は負けないと思う。

●著者プロフィール
鈴木 ケンイチ(すずき けんいち)1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。

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