東京都は駐車台数の50%以上に充電器設置を義務化へ
去る2022年12月15日の東京都議会において、新たな建築物にEV/PHV充電用設備の設置を義務付ける「改正環境確保条例」が可決された。今後、2年程度の準備・周知期間を経て、2025年4月から施行されることになる。
これは東京都内で年間に供給延床面積が2万平方m以上の建物を供給する「特定供給事業者」に適用されるもので、EV充電器のほかにも、太陽光パネルの設置、断熱、省エネ性能など建物の整備義務が細かく指定されている。
つまり、2025年4月以降に販売される大手住宅メーカーやデベロッパーが手掛ける都内の新築マンションやオフィスビル、そして商業施設には、すべてEV/PHV用充電器が“標準装備”されるということになる。
今回の条例改正で注目されるのは、マンション居住者や賃貸契約で入居する法人の社用車など契約によって専有する「専用駐車場」と、商業施設など不特定多数が一時的に使用する「共用駐車場」という用途に応じた考え方(定義)を持ち込んでいるところだ。
前者は駐車車両が特定され駐車時間も長いため、EVやPHVの基礎的充電場所という位置づけ。後者は多種多様な車両が一時的に使用するので、あくまで“継ぎ足し充電場所”と考えられている。
前者では駐車場台数の20%に普通充電器の設置が義務付けられたほか、近い将来のEV増加を見据えて駐車台数の50%以上の整備・拡張用のケーブルルート用の空配管整備をしなければならない。
つまり、最低でも5台に1台の割合で充電設備を設置するほか、拡張用ケーブルのルートも確保しなければならないということになる(ただしこの基準は、駐車台数が5台未満の駐車場には適用されない)。
一方、商業施設の場合はあくまで継ぎ足し充電用の共用駐車場という位置づけなので、10台以上の駐車区画では総駐車台数にかかわらず1台以上の充電器を設置することとなっている。
ライオンズマンションはすでにEV充電コンセントを標準化
もっとも、今回の条例改正を待つまでもなく、数年前から大都市圏を中心に新築マンションやオフィスビルには、当初からEV/PHV用充電器が設置されるケースが増えている。
たとえば、ライオンズマンションでお馴染みの大手マンションディベロッパー「大京」は、2010年から新規分譲マンションの駐車場区画の10%に充電設備を設置してきた。2022年5月に同社はその数字を50%にまで引き上げると同時に残る駐車区画にも空配管を整備することを発表している。
また、東急不動産は2021年12月に全戸充電器付き専用駐車場を備えた分譲マンション「ブランズ上目黒諏訪山」を都内目黒区で販売開始(一都三県の首都圏で初)して話題となった。
今後もこうした大手ディベロッパーの動きが加速することは間違いなく、2025年を待つまでもなく新築マンションやオフィスビル、そして商業施設では駐車キャパシティに見合った数の充電設備が当初から設置されることになるだろう。
東京都の条例改正では、具体的な設置台数や将来の拡張性にまで踏み込んでいるのが目をひくところだ。5台に1台の充電設備と拡張性を睨んだ空配管の整備という新たな基準が明文化されたことにより、今後は各自治体のとくに都市部の建築基準見直しに波及していくのは確実と見てよいだろう。これでEVやPHVの普及に弾みがつくことは間違いない。