2026年9月4日、NASAは超音速実証機X-59が25回目の試験飛行に成功し、いよいよソニックブームを抑えた静かな超音速飛行の検証に移行できる見込みであることを発表した。

文: スマートモビリティJP編集部
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ソニックブームを抑えることで、陸地上空での超音速飛行解禁を目指す取り組み

航空機が大気中を超音速飛行すると、機体の各部から衝撃波が発生し、それらが合体してひとつの波面として地上に伝わることで、急激な圧力変動により爆音のような大きな騒音と振動(ソニックブーム)がもたらされる。そのため、従来は陸地上空での超音速飛行が禁止されており、超音速旅客機の商用運航において大きな障壁となっていた。

ところが近年、民間では米国ブーム社、国立の機関では日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)やアメリカ航空宇宙局(NASA)などが、ソニックブームを抑えた次世代型超音速旅客機の開発に挑戦している。

NASAの超音速実証機「X-59」は、細長い機首形状やエンジンを機体上面に配置するなどの工夫を施すことで、従来の航空機のように大きなソニックブームを発生させないよう設計されている。もちろん騒音がないわけではなく、「ドスン」という程度の小さな音だけを発しながら超音速飛行できるといわれている。

画像1: ソニックブーム発生を抑制するために複雑な機体形状をしている。(画像:NASA/Jim Ross)

ソニックブーム発生を抑制するために複雑な機体形状をしている。(画像:NASA/Jim Ross)

X-59は、2025年10月に初飛行。2026年6月にはじめて超音速飛行を成功、同年8月に行われた通算25回目の飛行では、飛行時間72分、最高速度マッハ1.2、高度4万9000フィートを記録するなど、順調に飛行実績を積み重ねてきた。

シミュレーション・風洞実験結果と実機の飛行データが一致

超音速飛行時に大きな衝撃音はなく、静かな「ドスン」という程度の音に抑えられる革新的設計の航空機「X-59」の開発には、建造前に行われた詳細なモデリングと設計が必要だった。現在進行中の飛行試験では、飛行データをシミュレーション予測と比較する「リアルタイムデジタルツイン」という手法を使用して、進捗を監視している。

画像: 初の超音速飛行時にマッハ1.077を記録した瞬間の計器画面。(画像:NASA)

初の超音速飛行時にマッハ1.077を記録した瞬間の計器画面。(画像:NASA)

これまでのところ、X-59の実際の飛行特性は、シミュレーションに非常に近い結果を示しており、空力上の予期しない現象や不安定性、過度な振動などは発生していないようだ。

初期の試験飛行では、飛行と安全な着陸を行い、安定性を示すことが主な目標だったが、その後は比較的早い段階でマッハ1.4(1487km/h)という目標巡航速度と高度5万5000フィート(1万6764m)を達成した。現在は、飛行エンベロープ(航空機が安全に飛行できる速度や高度、荷重などの限界範囲)での性能確認が進められており、低速・低高度の条件も含めた試験が行われている。

ちなみにこのマッハ1.4という速さは、単純計算で成田→ロサンゼルスを6時間程度で到達できる速度であり、マッハ0.85の一般的な旅客機よりも3〜4時間ほど時間短縮できるという。

いよいよ静かなソニックブームの音響検証フェーズに突入

NASAは、X-59がさまざまな条件下において期待通りの性能を発揮していることから、いよいよ同プロジェクトのメインミッションである「静かな超音速飛行」の検証に移行することにした。今後数カ月で実施される音響検証試験段階では、X-59を飛行させながら、地上および空中からさまざまなツールを使用して、その音響を測定・特性評価する予定だ。

画像2: ソニックブーム発生を抑制するために複雑な機体形状をしている。(画像:NASA/Jim Ross)

ソニックブーム発生を抑制するために複雑な機体形状をしている。(画像:NASA/Jim Ross)

同ミッションで音響検証技術を担当するクリアット氏は、「音響検証は、X-59の設計に使用されたツールと手法を検証するものであり、こうしたツールは将来、あらゆる商用超音速航空機の設計思想の一部となる可能性を秘めている」と語る。

超音速巡航飛行においても、事前のシミュレーションどおり「ドスン」程度の騒音に抑えることができるのか。超音速旅客機復活に向けた人類の挑戦の結果に期待したい。

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