日本×インドの国際共同月面探査プロジェクトに活用
LUPEX（ルペックス／月極域探査機）は、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）とインド宇宙研究機関（ISRO）が共同で進めている国際共同の月面探査ミッション。
JAXAはH3ロケットでの打ち上げと月面探査車（ローバー）の開発を、ISROはローバーを運ぶ着陸船の開発をそれぞれ担当。月面着陸後のローバーが月面を移動しながら、複数の地点を採掘し、どの場所にどの程度の量のどのような状態で水が存在しているかを調べる計画だ。
同ローバーは地上からの遠隔操作で制御され、搭載センサーにより周囲の環境を認識することで、安全な移動を妨げる障害物との衝突、転倒やスタックを引き起こすリスクのある地形を回避する必要がある。オペレーターは、限られた時間制約の中、常時見落としが許されない安全状態の監視をしながらの運用となるため、疲れにくく、理解しやすい状態監視機能の提供が求められている。
今回共同開発するシステムは、地上不整地環境向けのセンシング技術を活かした、ローバー向け安全運転支援システム「LUNADAS」で、AIによる障害物検知機能とローカル地図作成機能を組み合わせた周囲環境認識インタフェースの提供により、オペレーターの負荷低減を図るというもの。
ステレオカメラ障害物検知支援のイメージ。
両社はこれまで、月面を想定した周囲環境認識技術の研究開発のため、NASAの観測データに基づく月面地形のモデリング、月面探査機の実撮影画像を参考にしたテクスチャの再現、NASAのSPICE（Spacecraft Planet Instrument C-matrix Events）組み込みによる太陽光の模擬など、ゲーム開発エンジン「Unity」を用いて仮想環境モデルのリアリティを向上させてきた。
共同開発では各種カメラや照明のモデリングに加え、LUPEXローバが月面走行したときの滑りや姿勢変動、スタックや轍の生成など、ローバーと砂路面相互の挙動を再現するため、設計データに基づいてLUPEXローバをモデリングし、物理エンジン（AGX Dynamics）を用いて砂路面での走行を模擬したLUPEXローバ走行シミュレータへの機能拡張を試行する。
すでにJAXA宇宙探査実験棟で、月極域を想定し、永久影や横から差し込む太陽光を模擬した照明環境における障害物検知と3D地図作成機能の性能、精度を検証し、性能改善が進められている。
今後は、さらなる性能改善、地上システムとの結合評価、シミュレータを用いた運用訓練によって開発を継続していく方針だ。
月面環境を模した施設での障害物検知のようす。
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