2025年9月3日(現地時間)、独フォルクスワーゲンは、ミュンヘンで開催されるIAAモビリティ2025(9月9日~14日)にて、2026年初頭に発売する新世代EVシリーズ、「ID.ポロ(POLO)」、「ID.ポロ GTI」の量産モデル、さらに同年後半に発売予定の「ID.クロス(CROSS)」のコンセプトモデルを公開すると発表した。併せて、今後発売される次世代のID.モデルは、現行ID.ファミリーが使用する数字との組み合わせではなく、「ID.+既存車名」のネーミングを採用することも明らかにされた。

ネーミング戦略を変更して既存ラインナップと新世代EVの共存へ

まずは量産モデルとして発表される2台、「ID.ポロ」と「ID.ポロGTI」について。前車は2023年3月にID.2allとして、後車は同年9月にID.2 GTIとしてコンセプトモデルが発表されているが、今回公開されるのは2026年前半に発売される市販モデルだ。従来のID.ファミリーのネーミング法則からいえば、この2台の正式車名もID.2、ID.2 GTIとなると思われたが(ID.Buzzは例外?)、予想に反して市販車は「ID.ポロ」、「ID.ポロ GTI」と命名される。

画像: 新世代EVシリーズとしてネーミング法則も変更。その第一弾が「ID.ポロ」。

新世代EVシリーズとしてネーミング法則も変更。その第一弾が「ID.ポロ」。

フォルクスワーゲンブランドCEOのトーマス・シェーファー氏は、その意図を以下のように語っている。

「私たちのモデル名は人々の心にしっかりと根付いています。これらは強力なブランドを表しており、品質、時代を超越したデザイン、すべての人のためのテクノロジーなどの特徴を体現しています。だからこそ、私たちはよく知られた名前を未来に移しています。ID.ポロは始まりにすぎません」

「フォルクスワーゲンは、新しいモデルが世代を重ねるごとに、より確立された名前を電気ポートフォリオに移す予定です。同時に、従来のドライブを備えたすべての車両は、引き続き以前の名前で走行します。この戦略により、フォルクスワーゲンは電気エンジンと内燃機関の世界を統合し、将来的に顧客がブランドの製品範囲をより簡単にナビゲートできるよう支援しています」

つまり、フォルクスワーゲンは、当分のあいだ内燃機関車と電気自動車が共存する道を選んだ。拙速なEVシフトではなく、従来の燃料機関搭載モデルとそれに「ID.」を冠するフル電動モデルを並行してラインナップするタームがしばらく続くという宣言だ。共通のネーミングを採用することで、ユーザーにわかりやすい選択肢を提供する。このあたりの思惑は、他の欧州ブランドにも共通している。

奇しくも2025年は「ポロ」の生誕50周年。黄金時代の復活へ

今回公開される2台にはまだラッピングが施されており、IAA 2025で明かされる情報も限定的となる可能性はある。とは言え、その中身は紛れもなく量産車そのものであり、2025年末までにはスペインの工場で本格的に生産が始まる。欧州発売は、ID.ポロが2026年初旬、ID.ポロGTIは同年中旬になると見込まれている。

画像: 2025年に生誕50周年を迎えた“ポロ”。ID.シリーズの追加で新たな時代を迎える。

2025年に生誕50周年を迎えた“ポロ”。ID.シリーズの追加で新たな時代を迎える。

ともに新開発の「MEBエントリープラットフォーム」を初採用。Bセグメント用の前輪駆動ベースEVプラットフォームであり、現行ポロのサイズ感とゴルフに匹敵するユーティリティを実現している。ちなみにID.2all発表時に公表されたボディサイズは、全長4050×全幅1812×全高1530mm。日本仕様のポロは全長4085×全幅1750×全高1450mmなので、ID.2allの方がほんの少し大きいが、サイズ感は同等。市販型ID.ポロもほぼ同じサイズになるだろう。むしろ全長はポロより35mm短く、逆にホイールベースはポロより50mmも長い2600mmであるところに注目しておきたい。

さらにEV初のGTIはリアスポイラーやディフューザー、そして微妙に膨らんだフェンダーアーチなどアグレッシブなエクステリアに加え、モーターの最高出力も223psと公表されている。将来はさらにパワーアップしたクラブスポーツの追加も囁かれており、新世代コンパクトEVのポテンシャルはかなり高そうだ。ライバルはアルピーヌ A290あたりか。

画像: 「MEBエントリー」は、フォルクスワーゲン初の前輪駆動車用EVプラットフォーム。後輪側にモーターを追加して全輪駆動とすることも可能だ。

「MEBエントリー」は、フォルクスワーゲン初の前輪駆動車用EVプラットフォーム。後輪側にモーターを追加して全輪駆動とすることも可能だ。

TクロスのEV版「ID.クロス」の量産直前コンセプトモデルも初公開

今回のIAA 2025では、ID.ポロをベースとしたクロスオーバー/SUVモデルのコンセプトモデル「ID.クロスコンセプト」も公開される。2023年12月にティーザー画像(ID.2 all SUVコンセプトカー)が公開されてその動向が注目されていたが、今回ようやくコンセプトモデルが披露される。

すでにそのレンダリング画像はSNS上で公開されており、内燃機関搭載車である「Tクロス」の電動モデルという位置づけで2026年末に発売される。ID.ポロおよびID.ポロGTIと同じく前輪駆動をメインに据えるものの、ID.クロスのみ後ろにモーターを追加した全輪駆動も設定される可能性が伝えられているので正式発表に注目したい。

画像: EVシリーズ初の“GTI”モデル。猛々しいエクステリアが新時代のドライビングエンタテインメントを予感させる。

EVシリーズ初の“GTI”モデル。猛々しいエクステリアが新時代のドライビングエンタテインメントを予感させる。

欧州で加速するEVの大衆化。その起爆剤となるのが「ID.ポロ」

今回披露される3台で期待されるは、その価格レンジだ。とくに「ID.ポロ」は、ID.2allの発表時に2万5000ユーロ以下(当時の換算レートでおよそ350万円)で発売されるとアナウンスされている。恐らく、ID.ポロGTI、ID.クロスもスターティングプライスは3万ユーロを超えないだろう。

すでに欧州では、ルノー5 E-Tech、アルピーヌ A290、日産 マイクラなど手ごろな価格のコンパクトEVが発売され、今後はさらに小さなAセグメントEVも次々に登場する見込みだ。フォルクスワーゲンも往年のup!を想起させるコンセプトモデル「ID.EVERY 1」を発表済みであり、2027年には発売するという。今後、欧州を中心にEVの大衆化が加速する。その台風の目となるのが、ID.ポロとそのファミリー、そしてフォルクスワーゲンとなるのは間違いなさそうだ。

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