宇宙ビジネスの展示会「SPEXA -【国際】宇宙ビジネス展 -(以降、SPEXA)」の日本航空ブースでは、未来に向けたワクワクする展示が行われていた。本記事では、JALによる宇宙輸送事業への挑戦についてご紹介しよう。

「青空のその先へ」航空会社が宇宙事業に進出する時代が到来

日本航空(JAL)は、言わずとしれた日本を代表する航空会社。航空輸送事業だけでなく、空より高い宇宙空間でのビジネス展開も見据えて、国内外の航空・宇宙スタートアップと相次いで協業を発表している。

宇宙の手前、成層圏を遊覧するガス気球

ひとつめの事業は、国内航空スタートアップの岩谷技研と協業し、高高度ガス気球を用いた擬似宇宙遊覧飛行を行うというもの。なぜ「擬似」宇宙遊覧なのかと言うと、このガス気球は成層圏(高度18~25km)までの遊覧飛行であるため、厳密には宇宙空間(高度100km)には到達しないからである。

画像: 宇宙空間より低い成層圏ではあるものの「宇宙っぽい」要素のいくつかを体感できる。

宇宙空間より低い成層圏ではあるものの「宇宙っぽい」要素のいくつかを体感できる。

ただし、実際に宇宙飛行した場合と同じように、地球の丸さや宇宙の暗さといった「宇宙的な要素」を気軽に体験可能で、しかもロケットによる宇宙体験よりも低コスト、かつ長時間楽しめるというメリットがある。

また、ロケットでは宇宙飛行士としての身体基準や特別な訓練が必要だが、気球による飛行だと緩やかに上昇・下降できるため、一般のひとでも特別な準備をしなくても体験できるという点でもアドバンテージがあると言えるだろう。

画像: 気球内は気温・気圧が保たれるため、宇宙服不要で誰でも気軽に搭乗できる。

気球内は気温・気圧が保たれるため、宇宙服不要で誰でも気軽に搭乗できる。

JALは、長年にわたる航空機の運航ノウハウを活かして、運航ルールの構築支援や、顧客体験の創出、気球のキャビン開発など、様々な領域で携わっていくとしている。すでに実証実験で成層圏への飛行は検証されており、2025年内に初の商用フライトを実施する計画というので、今後の展開にも注目だ。

令和版スペースシャトル

米国シエラスペース社が開発する宇宙往還機「Dream Chaser(ドリームチェイサー)」は、かつてのスペースシャトル・オービター(以後、スペースシャトル)と同様に再利用可能な宇宙船。

初号機は全長9m、従来のスペースシャトルの4分の1ほどというコンパクトなボディで、無人機として設計。飛行操縦のための翼が備わっており、地球帰還時には飛行機と同程度の1.5Gで滑走路に着陸できるため、国際宇宙ステーションからの貨物を安全に回収可能なのだという。

画像: ドリームチェイサーは地球帰還時に滑走路へ着陸できるため、振動に弱い機器を安全に輸送可能だ。

ドリームチェイサーは地球帰還時に滑走路へ着陸できるため、振動に弱い機器を安全に輸送可能だ。

この地球帰還時の着陸地点のひとつに日本の大分空港が名乗りをあげており、JAL、大分県、兼松、三菱UFJ銀行、東京海上日動火災保険がパートナーとして参画している。JALはオペレーションの開発や、航空機の運航ノウハウと衛星データを組み合わせた課題解決などに貢献するそうだ。

ちなみに、シエラスペースは海外のスタートアップとしては珍しく公式HPに日本語表示オプションが用意されている。着陸候補地のひとつが日本だということ、IHI/兼松が共同開発した宇宙ステーションとのドッキングシステムを採用するなど、日本との関係が深いことも要因のひとつだろう。気になる人はぜひこちらもあわせてチェックしてみてほしい。

月への輸送

ispace社は、2010年に創業した月面資源開発分野の宇宙スタートアップ企業。日本とルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、月への高頻度かつ低コストによる輸送サービスを提供することを目的として、小型のランダー(月面着陸船)やローバー(月面探査車)を開発している。

2023年4月に行われたミッション1と2025年のミッション2では、日本初の民間企業主導による月着陸船(ランダー)での月面着陸を検証。月面着陸こそ達成できなかったものの、降下フェーズまでのデータ獲得や今後の対策に向けた分析ができたという。

2027年に実施するミッション3以降は、この2度の失敗で得られたノウハウをもとに従来より大型の着陸船を新規開発。月面着陸、月面探査プロジェクトが本格始動予定で、JALは航空機の整備ノウハウを活用し、今までの協業として月着陸船の部品製造や組立支援、月面探査ローバーを始めとした精密機器の輸送支援を実施した。

このように、JALは航空分野を超えて宇宙事業にも積極的に乗り出しており、その動向が注目されている。JALの象徴である鶴丸ロゴマークが宇宙空間を飛び回る日が来るかもしれない。

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2025年8月7日、記事の一部を加筆修正いたしました。

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