2025年7月11日、NASAはJAXAと共同で日本の調布市にある風洞実験施設で超音速試験機X-59の縮尺模型を用いた試験を実施したと発表した。

ソニックブームを抑えた超音速飛行を実現

一般に、航空機が音速を超える速度で飛行すると機体の各部から衝撃波が発生し、それらが合体してひとつの波面として地上に伝わることで急激な圧力変動により爆音のような大きな騒音と振動(ソニックブーム)がもたらされる。実際、過去には建物の窓ガラスが割れるといった被害も出ていることから、陸地上空での超音速飛行が認められず、運用する際の大きな障壁となっていた。

近年では、民間では米国ブーム社が単独で、国立の機関では日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)とアメリカ航空宇宙局(NASA)などが共同で、ソニックブームを抑えた次世代型超音速旅客機の開発に挑戦している。

「X-59」はアメリカの実験機シリーズ「Xプレーン」のひとつで、NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発中の実験機。ソニックブームを極限まで低減し、地上の一般人の反応を調査することで、陸上における新たな許容騒音の基準値の設定に役立てられるという。

画像: 初飛行に向けた地上試験の最終段階に入ったX-59。(画像提供:NASA)

初飛行に向けた地上試験の最終段階に入ったX-59。(画像提供:NASA)

今回の風洞試験は、JAXAやNASAのグレン研究センターでの試験に続くもので、X-59モデルの風洞試験としては3回目。X-59が超音速飛行中に発生させる衝撃波による騒音レベルの理解を深めるために利用される。

JAXAの風洞は幅と高さが約3フィート(約91cm)であり、X-59の縮尺模型を用いて設計された超音速巡航速度であるマッハ1.4(約1450km/h)を模倣した条件でテストが行われ、航空機周囲の空気の流れや数値流体力学モデルを基にした予測との比較を可能にする重要なデータが収集された。

画像: JAXAの超音速試験風洞でのX-59縮尺模型実験のようす。(画像提供:NASA)

JAXAの超音速試験風洞でのX-59縮尺模型実験のようす。(画像提供:NASA)

なお、X-59の実機は2025年内に初飛行する予定で、2025年7月17日には初飛行前最後の地上試験であるタキシング試験が開始されている。

20世紀の超音速旅客機コンコルドでは叶わなかった陸上上空の超音速飛行解禁に向けた新技術の開発が、今度こそ超音速移動時代を切り開くことになるのか、今後の展開にも注目したいところである。

This article is a sponsored article by
''.