長安マツダ(マツダの中国合弁会社)と車載電池メーカーの最大手CATLが、スケートボード型シャシをベースにした次世代EVプラットフォームを共同開発するという。スケートボード型シャシは、EV車の開発に大きな変革をもたらす技術と言われ、日本のマツダも2027年以降に発売する次世代EVシリーズ向けの専用プラットフォームとして自社開発を進めている。(タイトル画像は長安マツダのEZ-60)

開発にかかる、コストと時間を大幅に短縮するスケートボード型シャシ

発表によれば、共同開発のベースになるのはCATLが2024年12月に正式発表した汎用スケートボード型シャシ「CIIC(CATL Integrated Intelligent Chassis)」。これを元に、EZ-6EZ-60に続く長安マツダのEV用にソフトウエア/ハードウエアの両面から共同開発作業を行うという。

そもそもスケートボード型シャシとはなにか。その設計思想そのものは、すでに2002年に米GMによって提唱されている。標準化された「板状のシャシ」に、モーター、バッテリーほか、走行に必要な装置一式を効率良く配置する方式で、スペース効率を最大化するとともに駆動方式の選択にも自由度が高まる。

また、車体を上下に分割して、上屋(デザイン、ボディなど)と下屋(パワートレーン、バッテリー、サスペンションほか)を別々に開発することが可能であり、車両の開発期間を従来のモノコックシャシを使った場合と比べて大幅に短縮できるとされている。

画像: CATLが2023年12月に公開したスケートボード型シャシ「CIIC(CATL Integrated Inteligent Chassis)」のプロトタイプ。

CATLが2023年12月に公開したスケートボード型シャシ「CIIC(CATL Integrated Inteligent Chassis)」のプロトタイプ。

その思想をベースにさまざまな方式が考案され、いまやEV専用ではなくPHEV/EREVでもそのコンセプトを反映したクルマづくりが模索されるようになった。さらに、バッテリーパック/ケースがシャシの構造部材を兼ねる「CTB(Cell to Body)」や、モーターと制御ユニットを一体化してコンパクト化=モージュール化する「X in 1(eAxel)」などの総合的な技術の進化も採り入れて、クルマの作り方が大きく変わりつつある。

極論すれば、シャシの基本設計さえきちんとできていれば、あとは上に乗せるボディ部分次第でいかようにも作り分けが可能になる。結果として、部品点数も大幅に削減され、車両重量も軽減されて航続距離の延伸も期待できるのだ。

画像: 現在の主流はボディ全体で剛性を確保するモノコック型シャーシ。衝突安全性能、運動性能ほか知見が蓄積されている。

現在の主流はボディ全体で剛性を確保するモノコック型シャーシ。衝突安全性能、運動性能ほか知見が蓄積されている。

CATLが2024年12月に正式発表した「CIIC」はシャシだけでなく、バッテリーやモーター、制御ソフトウエアまで一体化されており、極論すればCIICだけで走ることもできる。あとは、この上にボディ部を被せることでクルマが1台出来上がってしまうのだ。従来は自動車メーカーが行ってきた工程に車載電池メーカーが参入してきたことは、まさに自動車開発の潮目が大きく変わってきていることを象徴している。

画像: CATLが開発したCIICの発表会動画。冒頭から50秒ほどご覧いただければスケートボード型シャシとは何かがご理解いただけるだろう。  youtu.be

CATLが開発したCIICの発表会動画。冒頭から50秒ほどご覧いただければスケートボード型シャシとは何かがご理解いただけるだろう。

youtu.be

もちろん、実際に車両として成立させるためには細かな調整作業が必要になり、それなりの開発期間は必要だ。とはいえ、CATLではその時間を従来の半分に短縮できるとアピールしている。今回の長安マツダとの協業はその一環であり、外資合弁会社との協業は初の試みとなる。

ちなみに、EZ-6およびEZ-60は長安汽車のEPAプラットフォームを使用しており、Deepal L07とS05、そしてS07とも基本アーキテクチャーを共用している。これにマツダの「人馬一体」のチューニングを施すことで、マツダ車ならではのハンドリングに仕上げられている。CIICをベースに行われる両社の共同作業においても、日本のマツダから技術エッセンスが投入されることが予想される。

This article is a sponsored article by
''.