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【走行感覚】ペダル回転数と車速が比例しないため、坂道でも漕ぐのが楽チン
標準モデルのT350 ProとハイパワーモデルのT600GRは定格出力が違うとはいえ、いずれも最高速度20km/hの電動バイク。そのため、平地走行でパワーの差を感じることはほぼなさそうだ。スロットルをひねれば一般的な電動バイクと同じく「開度に応じて」、ペダルを漕ぐと手元のスロットル開度と関係なく「スロットル全開」扱いで車速が制御される。
この「ペダルを漕ぐ=スロットル全開扱い」により、ペダリングをすることで前述の「擬似クルーズコントロール機能」として利用できるのは便利である。
ペダルを漕いだときの負荷は、直接駆動に用いないため平地であろうと坂道であろうと一定。たとえるなら平地で自転車のペダルを回しているときと同程度と比較的軽めだ。ゆっくり漕いでも、風を切ってぐんぐん進んでいく独特な走行感覚を楽しめるはずだ。

ペダルの回転速度が車速に比例しないユニークな走行感覚を体験できる。
ちなみに、T350 Pro/T600GRではペダルが駆動系に直結されていないことは前述したとおりで、停車時でもペダルが固定されない。自転車のようにペダルに足をかけて信号待ちをするのではなく、地面に足をつけて待機する運用が求められる点もユニークである。
また安全確保のため、ブレーキレバーを握っている状態ではペダルを漕いでもモーターは停止したままとなる。信号待ちで停止している際は必ずブレーキをかけておくことで、うっかりペダルに踏力がかかって全開加速してしまうような事故を防ぐことができる。
【登坂性能】坂道が連続するとT600GRの優位性が光る。今買うならT600GRがおすすめ
今回の試乗では、実測12%(7度)の勾配がある上り坂を走行し、登坂性能をチェックしてみた。(体重64kg・手荷物なし)
標準モデルのT350 Proで坂道発進は問題なく行えるものの、上り坂が続くにつれて車速も14〜15km/hまで低下。ちなみにスロットル操作だけで走行しても、ペダル漕ぎを併用しても、速度の低下率は同じだ。
ペダルを漕がず、スロットル操作のみで坂道を上るようす。(勾配9%・T600GRにて)
www.youtube.com一方、ハイパワーモデルのT600GRは軽量ボディであることも相まって、坂道発進時に体重を前方にかけることを意識しないと軽くウィリー状態(前輪が浮く)になるほどのパワーを発生し、減速することなく、20km/hを保ったまま登坂しきった。坂道が多い場所ではT600GRの優位性が際立つことになる。
ペダルを漕ぎながら坂道を上ってもパワー感に変化はない。(勾配9%・T600GRにて)
www.youtube.com車両本体の定価はT350 Proが28万円、T600GRが32万円に設定されている。ただし、現在T600GRの先行販売期間ということもあり、T350 Proが18万2000円(公式通販価格)、T600GRが16万円(同)と逆転している。今すぐに入手したいのなら、選択肢はT600GR一択だ。
【結論】ENNE Tシリーズは「漕いでも漕がなくても乗れる自転車」のようなEVバイク
交通ルールが自転車とほぼ同等の「特定小型原付」は、しばしば電動アシスト自転車と比較されることがある。
電動アシスト自転車の場合、バッテリー電力がなくなったとしてもペダルを漕ぐことで、少し重たい自転車として移動することはできる。一方で、一般的にペダルのない特定小型原付のバッテリー充電がなくなったら押し歩きするしかなく、電欠したときのハンデは大きいと言える。
この点、ENNE Tシリーズはペダルを漕がなくても航続距離70kmの電動バイクとして利用でき、ペダルを漕ぐと2倍の140km走行可能な電動バイクになるので、特定小型原付の課題とも言われている「航続距離の短さ」をカバーできるのだ。
また、歩道走行モードを搭載し、折りたたみ可能な軽量車体で持ち運びしやすいため、運用の幅が広いこともメリットだ。
定価こそ30万円前後と高額だが、実勢価格は国産ブランドの電動アシスト自転車(メーカー小売り希望価格)と同水準の16万円〜18万2000円に収まっているほか、T350 Proについては全国の提携店舗での販売・修理にも対応している。
16歳以上が免許不要で乗れるため「免許返納後の移動手段」として考えても魅力的。漕がないと走行できない電動アシスト自転車に対して、ENNE Tシリーズは漕いでも漕がなくても走行できる電動バイクであるというアドバンテージが活きてくるはず。
とくにハイパワーモデルのT600GRは、坂道でも速度を落とすことなく通過できるため、普段の移動を楽にしたい場合、電動アシスト自転車を代替する有力な候補と言えるだろう。
東京都にあるENNE本社にて試乗受付を行っているほか、T350 Proはカー用品店のオートバックス一部店舗で取り扱っており、試乗もできるという。実機を確認したいという人は問い合わせてみてはどうだろうか。
なお、特定小型原付は自賠責保険加入・ナンバープレート取得が義務化されており、歩道通行時には走行モード切り替えが必須となるなど、完全に自転車感覚で利用することはできない。16歳以上が免許不要で誰でも利用可能ということもあり、ユーザーによる交通ルールを無視した運転が大きな社会問題となっているのも事実だ。
特定小型原付を利用する場合は、あらかじめ交通ルールを学び、運用方法と注意点をよく理解した上で移動の選択肢のひとつとして活用してほしい。






