2025年2月に大幅改良が発表されたボルボ XC90。フロントグリルやボンネットフードなどフロントマスクを中心に意匠変更し、またインテリアにおいてもユーザーインターフェイスを刷新するなど、デザインの近代化と上質感を高めてきたボルボのフラッグシップSUVだ。デザイン性の向上を第一義にしたという大幅改良だが、走行面で変化や進化はあるのか「ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド」に試乗して確認した。(写真:永元秀和/Motor Magazine 2025年5月号より)

動力系統に変化はない。それでも高まるプレミアム性

2024年11月の国際試乗会でそのプレミアム性を体感した記憶もまだ新しいが、早くも日本仕様が導入されて、2025年3月にまずはPHEVのウルトラT8 AWDを都内で運転することができた。

交通環境が北欧と違うとはいえ、新たな発見はないかもしれないと、当時の記憶を思い出しながら対面すると、そもそもエクステリアの印象が異なることに驚く。

新型XC90は2つのデザインテーマ「ダーク」と「ブライト」を用意されて、日本仕様のT8 AWDは前者が標準仕様となる。「着物の右前の襟合わせ」を想起させる、2方向からの斜線を重ねたフロントグリルは、アイアンマークとこれを貫く1本のクロームメッキを残し、フレームも含めてブラックアウト化されている。

画像: プラグインハイブリッドのXC90 T8は「ダーク」をデザインテーマとし、フロントグリルやアンダーグリルなどはブラックのパーツを配置されている。

プラグインハイブリッドのXC90 T8は「ダーク」をデザインテーマとし、フロントグリルやアンダーグリルなどはブラックのパーツを配置されている。

こうした変化はサイドからリアを見ても同様で、ドアミラカバーやウインドーモールなどもカラーを変更されている。もし現在のラインナップで、クロームメッキによる加飾をテーマとした「ブライト」を選択したければ、MHEVのB5 AWDを選ぶことになる。

コクピットに着いて真っ先に目にとまるのはやはり11.2インチの大きなセンターディスプレイだろう。従来はインパネにビルトインされた9インチだったが、画面を手前に浮かせるよう配置したフローティングタイプで、見やすさだけでなく操作性も向上した。

従来から物理ボタンを少なくしたシンプルなインテリアデザインを取り入れてきたボルボだが、その効果は上質感の向上やスマホのような操作感を得られるといった、メリットだけではなかったようだ。設定変更のために複数回の操作を必要として、簡便さが損なわれることもあったという。

画像: センターコンソールやインストゥルメントパネルなど、従来モデルよりも直性基調を多く取り入れたデザインとなっている。

センターコンソールやインストゥルメントパネルなど、従来モデルよりも直性基調を多く取り入れたデザインとなっている。

そこで、運転中に多用する機能は集約して上の階層に表示するように改良された。例えばドライブモードセレクターで、EVモードの「ピュア」やスポーツモードの「パワー」など5つのパターンを瞬時に呼び出せるようになった。大画面化だけではない、センターディスプレイの進化は日常使いだけでも充分に体感できるはずだ。

インテリアのテーマはウッドパネルと布地を組み合わせたもので、日が暮れたりトンネルに入るとパネルのわずかな隙間から間接照明光が漏れ出てくるイルミネーションも追加されている。4つある内装色の中でも、試乗車のようにブラウンアッシュウッドとカルダモンプレミアムテキスタイルを組み合わせたインテリアは暖かで、落ち着き感を強めてくれる。

乗る人すべてに快適な移動空間を

では、走行面はどう変わったのか。実はT8 AWDに搭載されるパワートレーンもエアサスペンションも2022年発売の後期モデルからキャリーオーバーしているもので、大きな変化はないという。

それでも、従来から採用されていたワンペダルドライブの快適性には改めて感動させられた。オートブレーキホールドからの発進、そして停車する瞬間のカックンという車体の揺れをまったく感じさせないのは見事というほかない。

画像: 大幅改良前のモデルから大きな変更はないというパワートレーン。それでも「段」をほとんど感じさせない加減速のスムーズさは格別。

大幅改良前のモデルから大きな変更はないというパワートレーン。それでも「段」をほとんど感じさせない加減速のスムーズさは格別。

動力系統に変更はないが、大幅改良でエンジンルームとキャビンを隔てるファイアウオールに遮音材を追加したり、ピラーに発泡材を充填したり、ラミネーテッドサイドウインドウを採用するなど、静粛性の強化が図られている。その効果は日常領域の走行中にも体感できるが、特に感じたのはトンネル内を渋滞しているときだ。

隣に並んでいるトラックやバスなどの大型車が発するエンジン音がずいぶん遠くの方で鳴っている・・・そんな印象だ。周辺の雑音をシャットアウトし、アクティブノイズコントロールでエンジンノイズを低減するなど、19スピーカー1410W出力を備えるバウワース&ウィルキンス オーディオシステム(XC90 ウルトラ T8に標準装備)の性能を活かした音響空間づくりに注力する、ボルボらしい改良ではないだろうか。

ボルボ XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4955×1960×1775mm
●ホイールベース:2985mm
●車両重量:2300kg
●エンジン:直4 DOHC ターボ+モーター×2
●総排気量:1968cc
●エンジン最高出力:233kW(317ps)/6000rpm
●エンジン最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000-5400rpm
●モーター最高出力:前52kW(71ps)、後107kW(145ps)
●モーター最大トルク:前165Nm(16.8kgm)/後309Nm(31.5kgm)
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・71L
●WLTCモード ハイブリッド燃費:13.3km/L
●EV走行換算距離(等価EVレンジ):73km
●タイヤサイズ:275/35R22
●車両価格(税込):1294万円

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