2025年4月16日、将来宇宙輸送システム(ISC)は、液体燃料ロケットエンジンの燃焼試験に成功したと発表した。同社によると、国内民間企業の液体メタンエンジン燃焼試験成功事例としては、4社目だという。 

人類の夢「完全再使用型ロケット」は、いまだに実現していない「究極の低コストロケット」

ロケットには現在主流の使い捨て型ロケット(ELV)と、繰り返し使える再使用型ロケット(RLV)の2種類がある。

毎回ゼロから機体を製造する使い捨て型ロケットに対して、再使用型ロケットは機体を再利用できるため、打ち上げコストを大幅に低減できる可能性があることから、現在世界各国で研究・開発が進められているホットなジャンルだ。

ちなみに、再使用可能な宇宙船というと「スペースシャトル」を思い浮かべるひとも多いだろう。しかし、再使用していたのはいわゆるシャトル本体である「オービタ(二段目に相当)」部分と固体燃料補助ロケット(一段目に相当)。

外部燃料タンクは使い捨てであったため、厳密にいうと部分的な再使用型ロケットなのである。

再使用する部品の検査や整備など安全対策のコストがかさんだことで、打ち上げ費用は当初の想定よりも大幅に膨れ上がり、最終的には老朽化や予算の関係で運用を終了することになった。

画像: スペースシャトルは、オービタ(宇宙船)と補助ロケット(白いロケット)のみ再使用していた。外部燃料タンク(赤茶色)は分離後、大気圏突入時に燃え尽きる。(画像:NASA)

スペースシャトルは、オービタ(宇宙船)と補助ロケット(白いロケット)のみ再使用していた。外部燃料タンク(赤茶色)は分離後、大気圏突入時に燃え尽きる。(画像:NASA)

現在のロケットでは、スペースXが開発中の発射場に帰ってくるロケット「スターシップ」(下の写真)も再使用型ロケットに分類される。とくに一段目部分「スーパーヘビー」については、発射台まで帰還してアームでつかんで回収するという高度な技術を確立しつつあり、ロケットの回収コストも減らすことに成功している。

二段目の宇宙船部分「スターシップ」の陸上帰還は一度も成功していないが、将来的には一段目「スーパーヘビー」と二段目の宇宙船部分「スターシップ」の両方とも陸上で回収し再使用することで、打ち上げ費用の大幅な削減を目指している。

画像: スペースXのスターシップ。下の銀色の部分が一段目ロケット「スーパーヘビー」で、上の黒い部分が二段目の「スターシップ」。(画像:スペースX)

スペースXのスターシップ。下の銀色の部分が一段目ロケット「スーパーヘビー」で、上の黒い部分が二段目の「スターシップ」。(画像:スペースX)

このように、再使用型ロケットは、NASAやスペースXなど各時代のフロントランナーが挑戦してきた夢のロケットで、「完全再使用型」についてはいまだに実現していない、まさに「究極のロケット」と言えるだろう。

単段式ロケットと多段式ロケットの違い

ロケットには使い捨て型 or 再使用型かという使い方による分類のほかに、「単段式」と「多段式」という打ち上げ形態による分類方法もある。

「多段式ロケット」は、二段または三段など、複数のロケットをまとめてひとつのロケットとして構成されたもの。下から順にロケットの燃料タンクが空になると順次切り離して、ロケット全体の重量を軽くしながら輸送効率を上げられるメリットを持つ。

そのため、スペースXの「ファルコン9」や「スターシップ」、JAXAの新型主力ロケット「H3ロケット」など、輸送能力を重視する大型のロケットは、ほぼすべてが多段式ロケットを採用している。

画像: JAXAの次期主力ロケット「H3」は二段式のロケット。(画像:JAXA)

JAXAの次期主力ロケット「H3」は二段式のロケット。(画像:JAXA)

一方、一段のみのロケットは「単段式宇宙輸送機(SSTO)」と呼ばれ、機構がシンプルで低コストな打ち上げができるというメリットがあり、科学観測・実験のための観測ロケットとして利用されることがある。

ただし、ひとを乗せるなど一定以上の輸送力が必要な大型ロケットでは、ロケットそのものの重量がかさんでしまい、宇宙空間まで到達できないこともあって実用化に至っていない。

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