着座式電動モビリティの導入を推進するライム
米国発の電動モビリティシェアリングサービス、「ライム(Lime)」が日本に上陸したのは2024年8月のこと。
その時点ですでに280以上の国と地域でサービスを展開してきたことによる経験と、ニーズにあわせたサービス、そして技術・システムを日本ユーザーにも提供。2025年3月現在、東京都23区の一部と沖縄県那覇市であわせて350以上のポートと、1300台以上の電動モビリティが運用されている。今後、2025年末までに500ポート/2000台に拡大することを計画しているという。
ちなみにライムが用意する電動モビリティはふたつあり、立ち乗り式の電動キックボードが台数全体の約60%、着座式の電動シートボードが40%程度の割合となっている。ところが実際に運用されていく中で、利用者のうちの70%は安定感や安心感を得やすい「着座式」を選択していることがわかってきた。そこでライムは着座式電動シートボードを増産して、立ち乗り式40:着座式60の割合に変更することで、よりユーザーフレンドリーなサービスへ進化させていくという。
さて、今回ライムが発表したのは、ユーザーはもちろんのこと周辺通行者の安全性を高めるふたつの施策だ。

着座式の電動シートボードを前にする、Lime カントリーマネージャー兼 アジア太平洋地域統括責任者のテリー・サイ氏(右)と日本政府渉外責任者の井上祐輔氏。
GPSを活用して進入禁止エリアを指定
ひとつは、電動モビリティ(特定小型原付)での走行が禁止されているエリアへの進入を防止、また低速で走行しなくてはならないエリアで自動減速を行うジオフェンシング技術の導入だ。なかでも社会問題として取り上げられることもある高速道路(自動車専用道路)への誤進入は、大きな事故につながる危険性も高いことから、警視庁や首都高速道路と連携しながらシステム開発を行ってきたという。
このジオフェンシング技術は位置情報を取得するGPSを活用したもので、ライムが指定したエリア・・・例えば高速道路の入り口につながるランプウェイに電動シェアモビリティが進入すると、自動的に、徐々に速度を落として停車するというもの。急停車するような制御ではなく「徐々に減速」というのがキモ。もし走行禁止エリアに入ってしまったら、クルマとの衝突を避けるため惰性走行で路肩へ移動してほしいという。

走行禁止エリアや減速エリアは、ライムのアプリ上に色をつけて表示される。
首都高速においてはすでに渋谷(上り)と新宿、池袋の3カ所が設定されている。こうした自動車専用道路のほかにも、明治神宮や皇居周辺、新宿御苑、代々木公園といったエリアはすでに実施済み、そして今後は渋谷センター街をはじめとして対応エリアを拡大するとしている。
地図上に仮想的な境界線を引くジオフェンシング技術は、実はライムが海外市場ですでに展開してきた技術のため経験値は豊富。それでも、気候や遮蔽物(ビルや高架)などに位置情報の精度が左右されるため、設定できないエリアも存在する。効果を慎重に検証して導入を進めていくという。
ビーコンを使った駐車マナー向上策
そしてもうひとつが、ビーコンを活用した駐車可能エリアの指定だ。ライムのポートでは従来、駐車枠に電動モビリティを停めたら、その写真を撮影して画像を送信→AIによる駐車の判定を受けてサービス利用を終了する流れだったが、それでも枠外にはみ出して歩行や通行の妨げになることもあった。
そこで枠内にBluetoothビーコンを設置することで、より正確に駐車できるシステムとしたのだ。ビーコンの効果範囲である半径3m以内に車両が入っていることを検知してから、アプリによる返却手続きに進む流れだ。このシステムはすでに50のポートに設置されており、2025年6月までにすべての拠点に導入、今後はポートの基本装備にしていくという。

ポート内に設置されたビーコンで適正な駐車が行われているかを検知する。
Limeの日本政府渉外責任者の井上祐輔氏は、今回の発表に合わせて「安全性の確保をユーザー任せにするのではなく、事故や違反を未然に防ぐため、利用可能なテクノロジーを最大限活用するとともに、企業としての責任を果たしながら、安心で安全な移動環境の構築に貢献してまいります」とコメント。
すでに実施されている初心者向け実地講習会「ファースト・ライド・アカデミー」や、ヘルメット着用を促進する割引制度「ヘルメットセルフィ」、継続的な車両のアップグレードと開発、保険制度の充実化などとともに、安全性を高める取り組みを行っていくとしている。