2024年11月6日、さまざまな乗り物で自動化が進むなか、JR東日本がグループ経営ビジョン「変革2027」に基づいて首都圏の主要鉄道路線でワンマン運転の導入を開始すると発表した。まずは2025年春に常磐線(各駅停車)と南武線で実施。2030年前後には首都圏主要線区をワンマン運転に切り替える計画だ。

2030年頃には首都圏主要線区のワンマン運転化を完了へ

少子高齢化に伴う人材不足が現実となりつつある一方で、技術の革新も目覚ましい。JR東日本ではグループ経営ビジョン「変革2027」を掲げ、人手不足や就労意識の変化などの課題を技術開発によって解消し、鉄道をより効率的かつサスティナブルな輸送モードにする変革を目指している。その最大の施策とも呼べるのが、首都圏主要線区をワンマン運転に切り替えることだ。この計画を推進していくことで社員の就労意識を「人ならではの創造的な仕事」へとシフトさせていく。

いよいよ始まるワンマン運転の導入スケジュールは以下のとおり。
・2025年春から、常磐線(各駅停車)の綾瀬駅〜取手駅間(10両編成)、南武線の川崎駅〜立川駅間(6両編成)でワンマン運転を実施。
・2026年春から、横浜・根岸線の八王子駅〜大船駅間(8両編成)でワンマン運転を実施(東神奈川駅〜大船駅間は横浜線車両E233系8両編成のみワンマン運転)。

その後も技術開発を継続して行い、さらなる安全性の向上を行いながら、2030年頃までに山手線、京浜東北・根岸線、中央・総武線(各駅停車)、埼京・川越線においてもワンマン運転を実施する予定だという。

ワンマン運転実施に伴う安全性への取り組み

ワンマン化によってもっとも懸念されるのは安全性の問題。JR東日本では、「運転席に乗降確認モニタを設置」、「異常時に乗客と輸送指令室との通話、および輸送指令室から直接車内放送を行う機能の導入(JR東日本初)」ほか、ホームドア整備を推進していく。

画像: 乗降確認モニターの例(南武線E233系)。

乗降確認モニターの例(南武線E233系)。

乗降確認モニターは運転席に設置されており、すべてのドアの乗り降りの状態がひと目で確認できる。また、列車内で非常事態が発生した場合は乗客が非常ボタン(SOSボタン)を押すことで運転士と直接通話することが可能。運転士が応答できない場合には、輸送指令室に直接つながって輸送司令員と会話することができる。輸送司令員は、乗客との会話から状況を判断して速やかに必要な対応(手配)を行う。また、運転士が車内放送できない状況にある時などは、輸送指令室から車内放送を行って乗客にタイムリーな情報を伝える。

画像: ワンマン運転実施に伴う安全性への取り組み
画像: 乗客が非常警報装置を操作すると運転士(応答できない場合は直接輸送指令室)と会話することができる。

乗客が非常警報装置を操作すると運転士(応答できない場合は直接輸送指令室)と会話することができる。

万が一、列車の外に避難が必要になった場合に使用する避難はしごを列車の最前部と最後部に設置(常磐線/各駅停車は、乗務員室内)。避難の際は、近隣の駅などから係員を派遣するなど安全に配慮した手配も行うとのことだ。

画像: 避難はしごの設置例(南武線E233系)。

避難はしごの設置例(南武線E233系)。

さらなる安全性向上のための技術開発を推進する

ワンマン化の普及に先立ち「輸送指令室で列車内のリアルタイム映像が確認できる機能の導入」、および「車両前方のステレオカメラによる障害物検知システムの開発」にも取り組んでいる。

前者は、列車内で非常事態が発生した際に車内の状況をいち早く把握して適切な対応を行う機能。非常通報装置が押される輸送指令室にアラームが鳴動し、車内防犯カメラのリアルタイム映像が確認できる。2025年度より山手線1編成に試験導入を開始して検証を進めていくという。

画像: 輸送指令室から列車内のリアルタイム映像が確認できるシステムも開発中。2025年度から山手線1編成で試験導入して検証を進めていく。

輸送指令室から列車内のリアルタイム映像が確認できるシステムも開発中。2025年度から山手線1編成で試験導入して検証を進めていく。

後者は、乗務員の運転支援および将来のドライバーレス運転を見据えたもの。車両前方に搭載したカメラの画像から、列車が走行する線路内の障害物をリアルタイムで検知するシステムであり、すでに京浜東北・根岸線の車両に搭載して走行試験を実施中だ。引き続き開発を進め、早期導入を目指している。

画像: ステレオカメラを用いた障害物検知システムは京浜東北・根岸線の車両に搭載して走行試験を実施中。

ステレオカメラを用いた障害物検知システムは京浜東北・根岸線の車両に搭載して走行試験を実施中。

いよいよ首都圏でも間近に迫ってきたワンマン運転。利用者側のメリットはまだ不透明ではあるが、将来も安定した輸送モードが維持される施策であることは確かだ。自動車でも自動運転がトレンドワードとなっている昨今、“電動モビリティ”の元祖が自動化へまた一歩踏みだしたと言えるだろう。

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