ドコモとソフトバンクの子会社同志の連携という希有な例
ドコモ・バイクシェアは名前から明らかなようにドコモの子会社で、OpenStreetはソフトバンクの子会社だ。ケータイ電話市場で鎬を削る両社が子会社同志とはいえ提携するのは非常に珍しいケースと言えそうだ。その背景にあるのはシェアサイクルをよりユーザーのニーズに即した便利なモビリティとして存在感を高めたいという両社の思いであることは想像に難くない。
そうした思いを後押ししたのが両社が持つポート(ステーション)の存在位置だったようだ。ひとことで言うと、都心部に強いのがドコモ・バイクシェアで、郊外住宅地に多いのがハローサイクリングなのだ。これを組み合わせればユーザーの利便性は格段に向上するのは明らかだ。
そのあたりのことを両社は「これまで地域展開や自治体公募などで競合となる場面もありましたが、限られたスペースでの獲得競争ではなく協調していくことにより、利便性の高いサービスの提供と事業の効率化の両立化ができ、結果としてシェアモビリティ事業を地域の課題解決に資する持続可能な交通インフラとして社会に定着させることができると考えました」と説明する。
対象エリアはこれから検討して2025年度には導入に
具体的な提携内容は以下の通りだ。
1:ポートの共同利用
両社がそれぞれ提供する電動アシスト自転車を双方のポートで利用・返却ができる。双方でリアルタイムに在庫情報を共有するシステムの連携、車両側で相手企業のポートへの返却を判定する仕組みの構築、双方の利用料金を按分するシステムを設計・構築する。
2:オペレーションの効率化
両社の自転車やバッテリーは共通のメーカーから調達しているので、再配置やバッテリー交換を連携することによるオペレーションの最適化やコストの効率化が可能になる。車体配置の最適化、バッテリー交換頻度の向上を実現して利便性の向上を図る。
3:共同調達の検討
両社が採用する車体、車体の修理用備品やポートのラックなどを共同調達することで、よりコストパフォーマンスの高い事業運営を実現する。
なお現在、ドコモ・バイクシェアのポート数は全国で3770カ所、OpenStreetのステーション数は全国で8500カ所ある。これらが一気に共同利用できるようになるわけではなく、今後、両社で具体的な対象エリアを検討していくとのことだ。発表会ではポートとステーションの配置などについて横浜市の例が挙げられていたので、このエリアが初導入の候補である可能性が高そうではある。
シェアサイクル市場は「自転車推進活用法」が施行された2017年から7年間でポート数が17倍に増加したという。短距離移動のインフラとして定着しつつあるが、今回の大手2社の業務提携でこれがさらに加速することになるだろう。スマートモビリティの時代は着実に進んでいるようだ。