エンジン車、ハイブリッド、そしてEVを混流生産
新設された工場は、およそ2年の歳月を経て完成した。敷地面積5万平方メートル、総床面積4万2500平方メートル(4階建て)を誇る新工場では、V12/V8などのエンジン搭載車、プラグインハイブリッド車、そして2025年後半に発表を予定している同社初の完全電動モデル=EVの生産を行う。
フェラーリは2022年に「マルチエネルギー戦略」を発表し、2023年から2026年に15の新型車を発売(現時点で一部既発売)、ラインナップの60%をハイブリッド(PHV)とEVに、40%を内燃機関車にする計画を進めている。さらに、2030年までにEV40%、PHV40%、内燃機関搭載車は20%の比率にするのが目標だ。つまり、近い将来はこの計画に則った新型車の多くが、この新工場から送り出されることになるだろう。
バッテリー、モーター、eアクスルも完全自社生産に
電動化を進めるにあたり、バッテリー、モーター、eアクスルなども、すべて同工場内部で生産される。今回その設備は公開されなかったが、総スペースの30%は“将来の開発”のために空けられているという。
ガラス張りでクリーンなイメージの新工場は、ボローニャを拠点とする建築事務所、マリオ・クチネッラ・アーキテクトのデザイン。屋上に設置された3000枚以上の太陽光発電パネルは、ピーク時出力は1.3メガワットに。車両関連の生産で消費される電力や工場内の空調など、オフィスも含めたあらゆる電力はほぼ再エネで賄われる。また建物全体には優れた断熱性と熱特性が与えられ、雨水を貯留してリサイクルするなど「ほぼゼロエネルギー」の建物となっている。
進化・環境・エネルギー、3つの「E」を象徴する
「E-building」のネーミングの由来を同社CEOのベネディット・ヴィーニャは、「“E”は電気やEVだけを象徴しているわけではない。進化(=Evolution)、環境(=Environment)、エネルギー(=Energy)の3つに焦点をあてて建設された」と説明している。とはいえ、最初の“E”がフェラーリの完全電動化への進化(ダビデ・アバーテ氏:同社最高技術・インフラ責任者)を意味しているのは興味深いところだ。
ちなみに新工場では、ロボットも積極的に導入していく計画だ。また詳細は不明ながら、正確な測位精度を実現する超広帯域(UWB)テクノロジーも導入していくという。もともと量産メーカーのような長大な生産ラインを採用していないフェラーリだが、今後は可能なところから自動搬送システムなどが導入され、ロボットによる作業領域が増えていくことになるのかも知れない。
今回、フェラーリはV12気筒搭載のプロサングエとV8ハイブリッドのSF90が生産フロアで組み立てられている様子を公開。すでに完全稼働できる状態にあり現在は「立ち上げ段階」にあると発表したが、正式な生産開始時期や生産モデルについては明らかにしていない。とは言え、既存のラインナップのほか、上述のとおり2025年に発表される新型EVがこの新工場から送り出されることは間違いない。
なおEVに関しては、電時点で発表時期以外にインフォメーションは一切ないが、ベーストリムでも50万ユーロ(およそ8570万円)以上になるのではないかと報道されている。庶民には高嶺の花であるが、そのデザインやパフォーマンスは大いに気になるところではある。