2024年6月21日(現地時間)、フェラーリはマラネッロに建設していた新たな生産拠点「E-building」の落成式を行い、併せて施設の概略を公開した。この新工場では、内燃機関車、ハイブリッド車に加え、2025年後半の発表を予定している同社初の完全EVモデルの生産も予定している。

エンジン車、ハイブリッド、そしてEVを混流生産

新設された工場は、およそ2年の歳月を経て完成した。敷地面積5万平方メートル、総床面積4万2500平方メートル(4階建て)を誇る新工場では、V12/V8などのエンジン搭載車、プラグインハイブリッド車、そして2025年後半に発表を予定している同社初の完全電動モデル=EVの生産を行う。

画像: 新工場では電動車だけでなく内燃機関車の生産も行う。

新工場では電動車だけでなく内燃機関車の生産も行う。

フェラーリは2022年に「マルチエネルギー戦略」を発表し、2023年から2026年に15の新型車を発売(現時点で一部既発売)、ラインナップの60%をハイブリッド(PHV)とEVに、40%を内燃機関車にする計画を進めている。さらに、2030年までにEV40%、PHV40%、内燃機関搭載車は20%の比率にするのが目標だ。つまり、近い将来はこの計画に則った新型車の多くが、この新工場から送り出されることになるだろう。

画像: 敷地はおよそ5万平方メートル、4階建ての建物の総床面積は4万2500平方メートルにも及ぶ。

敷地はおよそ5万平方メートル、4階建ての建物の総床面積は4万2500平方メートルにも及ぶ。

バッテリー、モーター、eアクスルも完全自社生産に

電動化を進めるにあたり、バッテリー、モーター、eアクスルなども、すべて同工場内部で生産される。今回その設備は公開されなかったが、総スペースの30%は“将来の開発”のために空けられているという。

ガラス張りでクリーンなイメージの新工場は、ボローニャを拠点とする建築事務所、マリオ・クチネッラ・アーキテクトのデザイン。屋上に設置された3000枚以上の太陽光発電パネルは、ピーク時出力は1.3メガワットに。車両関連の生産で消費される電力や工場内の空調など、オフィスも含めたあらゆる電力はほぼ再エネで賄われる。また建物全体には優れた断熱性と熱特性が与えられ、雨水を貯留してリサイクルするなど「ほぼゼロエネルギー」の建物となっている。

画像: 広大な生産ラインは明るく開放的で、大きな窓からは庭園のあるテラスを見渡すことができる。

広大な生産ラインは明るく開放的で、大きな窓からは庭園のあるテラスを見渡すことができる。

進化・環境・エネルギー、3つの「E」を象徴する

「E-building」のネーミングの由来を同社CEOのベネディット・ヴィーニャは、「“E”は電気やEVだけを象徴しているわけではない。進化(=Evolution)、環境(=Environment)、エネルギー(=Energy)の3つに焦点をあてて建設された」と説明している。とはいえ、最初の“E”がフェラーリの完全電動化への進化(ダビデ・アバーテ氏:同社最高技術・インフラ責任者)を意味しているのは興味深いところだ。

画像: 建物の屋上には3000枚を超える太陽光発電パネルを設置。約1.3MWのピーク電力が発電される。

建物の屋上には3000枚を超える太陽光発電パネルを設置。約1.3MWのピーク電力が発電される。

ちなみに新工場では、ロボットも積極的に導入していく計画だ。また詳細は不明ながら、正確な測位精度を実現する超広帯域(UWB)テクノロジーも導入していくという。もともと量産メーカーのような長大な生産ラインを採用していないフェラーリだが、今後は可能なところから自動搬送システムなどが導入され、ロボットによる作業領域が増えていくことになるのかも知れない。

画像: ロボット技術が導入され組み立て途中の車両が自動搬送システムにより台車で移動する。

ロボット技術が導入され組み立て途中の車両が自動搬送システムにより台車で移動する。

今回、フェラーリはV12気筒搭載のプロサングエとV8ハイブリッドのSF90が生産フロアで組み立てられている様子を公開。すでに完全稼働できる状態にあり現在は「立ち上げ段階」にあると発表したが、正式な生産開始時期や生産モデルについては明らかにしていない。とは言え、既存のラインナップのほか、上述のとおり2025年に発表される新型EVがこの新工場から送り出されることは間違いない。

なおEVに関しては、電時点で発表時期以外にインフォメーションは一切ないが、ベーストリムでも50万ユーロ(およそ8570万円)以上になるのではないかと報道されている。庶民には高嶺の花であるが、そのデザインやパフォーマンスは大いに気になるところではある。

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